8月2012

「さつまいも」

生活

 「さつまいも」は、俳句の季語にふさわしいかどうかは一向に存じ上げないが、ご当地薩摩の感覚では、まもなくの9月が収穫月。「芋掘り」は、保育園幼稚園では大人気の秋の風物詩となる。この時節、空は高く蒼い。強い陽射しの下、掘り起こしすと、なんとも形容し難い熟した「土の臭」が立ちのぼる。

その昔、前田利右衛門という賢者が、薩摩の食料事情を改善しようと唐の時代に琉球に伝わったという芋の苗(種芋)を持ち帰り300年以上になる。爾来、薩摩では、この芋を「からいも」(唐芋)と呼ぶ。利右衛門のもたらした善行は、その後、大きな開拓殖産を生む。火山灰で出来た土壌(多くは桜島の火山灰)は、深い地層のところで600メートルもあるというが、土地が肥沃でなくとも良く育つ「さつまいも」は、実に多くの恵みをもたらした。

「でんぷん」。加工食品の品質表示欄をみると、水産加工品まで含め、多く食料品に使われているかが分かる。これも「さつまいも」にお世話いただいているものだ。大好きな「芋焼酎」。このなんともいえない「風味」は、「さつまいも」(コガネセンガン種)のもたらすものである。これを「臭い」とお感じの方は、本物の「芋焼酎にお目にかかれず、人生に大きな損失をしている。」しゃぶしゃぶ専門でも振舞われる「さつま黒豚」(島豚とバークシャー種の交配種)は、生まれてから6ヶ月間で90キロに育てて送り出される。この「さつま黒豚」は、脂身が実に美味い。これは、発酵させた「さつまいも」を与えることによって旨みをつくり込み、臭みをなくさせる飼育法によるものである。「さつま黒豚」など特産品には、ご当地独自の飼育や製造に厳格な小うるさい定義がある。

 

以前から交流があった中国の某市市長や共産党書記を鹿児島に招いたことがある。農業県としての鹿児島に学びたいということだったが、今後の食糧事情を慮り申し入れを快諾した。「さつま黒豚」の良質な「種」を譲り受けたいと

懇請されたが丁重にお断りした。知的所有権保護的な思想が、強かったわけではない。一番の理由は、ご当地で焼酎や菓子、飼料その他に重宝される「さつまいも」を振舞われ、先様は、「これは、豚の餌ではないか」と立腹されたことにあった。食に文化的な質の差はあろうが、「小生は、あなたのいわれる豚の餌を食して大きくなった。」という言葉にも耳を貸していただけないような次第であった。「紫いも」の種子島種などは、糖度も高く、自然な甘味が消費者に受け入れられ高級食材となっている。スイートポテト用の種を栽培する農家は、高額所得者に名を連ねている。今や「さつまいも」は、高付加価値農産品である。唐の時代の中国から確かに伝来してきた芋ではあるが、いつまでも「本家」の芋が「豚の餌」ではあまりにも寂しい。「さつまいも」の潜在能力で、もっと国際貢献を行うことができそうなものである。また、それが念願でもある。