9月2012

黄金伝説。日本の秋

生活

 九月も半ばになると金風がさわやかに吹き抜ける。金風は高貴なイメージを抱かせるが、むしろ陰陽五行説の「白」・「西」・「金」に由来するものであろうし、紛れも無く西からの吹く風のことである。日本の美しい言葉の一つとして、「秋茜」を小職はあげたい。もちろん「秋茜」は、とんぼのアキアカネのことであり、カタカナで書くほうがこのましいのだろうが、音の響きが妙に心地よいのだ。目にも「秋茜」の方が美しい。このとんぼは、切なく郷愁をかきたてる。しかし、田園風景には、むしろシオカラトンボのほうがこの時節は似合いそうだ。シオカラトンボは、雌雄の色が違い、雌はムギワラトンボと呼ばれる。同郷の長渕剛の代表曲「とんぼ」のとんぼをシオカラトンボだと小生はきめつけている。

 

マルコポーロの東方見聞録で記載された“ジパング”が、海外における日本の黄金伝説の起源だが、何ゆえマルコは見もしない、行きもしない日本のことを黄金伝説で染め上げたのであろうか?確信に満ちた言葉は、大陸の一般的な

風評というより定説だったと想像できる。始皇帝もその昔、蓬莱から不老不死

の薬を日本に求めようとしたことがあった。なぜだろうか?

以前、日本人が日常の風景として、見逃しがちな田園風景を外国の方々は、感嘆の声で賞賛すると紹介したことがあった。夏のはじめから盛りにかけては、

田に豊かに張られた満面の水やどこまでも続く緑に輝く稲の波が美しい。秋には、稲穂が黄金に実り、黄金色に輝く虫達も飛び交う。虫達が盛るのだから、

本当に作物が豊かに収穫できるに違いない。そのように思うことだろう。

 

コメは、扶養力が非常に高い作物である。渡辺利夫著「開発経済入門」の記載データによると、単位面積あたりの比較で陸稲や麦の20倍から30倍もある。それだけ、多くの人を養い、腹を満たすことが出来る作物である。そのコメは、豊かな水と年較差(気温の較差~四季がはっきりしている)が収量に大きな影響を及ぼす。マルコが、チャイナに東へ西へと行脚していたころ、渡来人のことばを通じて、水の豊かさと美しい四季の東国のことを耳にしたのだろう。その国の生み出す黄金の宝のことを、見たこともない黄金に輝く稲穂でなく、貴金属のひかりものと勘違いしてもおかしくあるまい。

この夏、炎天下で貯水量のことを随分と気にした。それでも日本の水は、中国韓国から見ると豊富である。唐に学び帰国したの空海は、凡そ1200年も昔、天才的土木工事を指揮し讃岐に治水の数々を行った。酷く渇く地に作った溜池にも、秋雨前線がさしかかれば天水が降り注ぐ。多くの命を養うに、十分なほどに。資源小国とはいわれるが、日本は天賦の国だと思われる。