9月2012

地方だからこそできる国際協力

生活

「国際交流」や「国際協力」と聞いて、国と国のお付き合いだから、中央にお任せしておけばよいとお考えの方が意外に多いことに気がつく。確かに行政機構上の問題もあり、中央がお付き合いの方向性を示したり、専門家の養成や調整員の派遣を行うことは多い。しかしながら、「国際協力の実態」を精査すると地方の支える「国際協力の形」や「国際協力の可能性」が見えてくる。



ところで、ジャーナリストの嶌信彦氏をご存知だろうか?

氏は、日本でもっとも活躍しているジャーナリストのひとりにして大学教授

である。素晴らしい見識や豊かな人間性で人々を魅了してやまない人である。氏は、NPO法人の日本ウズベキスタン協会の会長をつとめこられた。小職は、同協会の方に請われてウズベキスタン国からの留学生の日本受け入れのお手伝いをした事がある。小職は、北海道の大学への受け入れ~生活支援や地域との交流や日本文化を学ぶ環境を整える~を担当させていただいた。小職の出身は、もともと九州なので、出身大学や恩師などのご支援をいただきながら受け入れ環境を整えようと図った。その時に、氏を囲み打ち合わせをしながら食事をした際、示された見識になるほどと思うことがあった。

氏は、旧ソビエト連邦の諸国からの留学生は、特に「北海道」で学ぶ事が「財産」になるとした。それは北海道が、単に寒冷地として留学生たちの出身国と共通性があるとか、北海道に祖国での生産に適する農作物が多く、学ぶものがあるとかしたのではない。

 

氏の示された見識は以下のように要約できる。

「北海道」は、本格的に開発されて百年あまり。北半球の途上国にとって、数百年も前から開発されてきた都市の事例から、参考になる事例を見つけることは難しいかも知れない。しかし、ほんの百年前に作られた事例がふんだんにあり、インフラ投資の手順や財政の手当て、維持管理手法など途上国からみれば

学ぼうとすれば、宝の山状態であるというものである。また、旧ソビエト連邦諸国の留学生にとっても、他の地域より圧倒的にロシア語を話せる人や歴史や地理に詳しい人々がいるので、北海道全体が学びの場所になるというようなことであった。環境保護や国土開発など広範囲にわたって学べるということであった。

氏の示された見識に従えば、日本の地方のあちらこちらで、途上国の手本、宝の山をいくらでも見つけることが出来るのではないだろうか?

・ 「小国」ながら自然が豊かで「観光立国」を目指そうとする国。

・    「島嶼国」ながら、その地理的な特性を活かして「貿易立国」を目指そうとする国。

・    「資源に恵まれない国」ながら教育レベルや文化水準の高い国。

・    「経済開発」は遅れているが、穀物生産国として可能性がある国。

いくらでも、日本の地域と結びつけて、世界的なパートナーシップを組めそうな事例がある。

 

小職は、普段から海外から日本留学について問合せを良く受ける。

その時は、できるだけ「地方」の大学に留学することを勧めている。

なかには、アルバイトが見つかりにくいと主張する学生もいるが、時間給が安くても物価安いので、あまりハンデイにならないということにしている。

小職が、地方に留学することを勧めるのは、特に以下のことがあるからである。地方によっては、閉鎖性があって外国からの客人に距離を保とうとするところがあるかもしれない。しかし、概して地方の人々は親切であるという点である。国費留学生たちは、アルバイトに追われることは無くても、出身国から与えられた使命に応えようと、研究に追いまくられ、地域の人々や日本の風俗習慣に触れる事無く留学期間を終えて帰国する者が多いと聞く。その彼らが、親日家や知日家を名乗る政府高官になるとすれば、いささか寂しい。また、私費留学生たちは、経済的な問題から学業とアルバイトの両立に苦しむものも多い。その彼らにも、地域の人々や日本に風俗習慣に触れることの無い留学期間で終わる場合が多々ある。本物の親日家や知日家を生み出すのに、実に大きな機会損失である。

留学生も含め、来日する多くの外国人が希望することの中に、「短時間で費用をあまりかけずに、ひととおりの日本文化に触れてみたい」というものがある。

「神社」「仏閣」の見学や「坐禅」や「精進料理」を食する体験。「瑞穂の国」の米や農産物を学んだり農業の実習。「茶道」「華道」「香道」「書道」「水墨画」「日本画」などの体験。「神楽」「歌舞伎」「浄瑠璃」「日本舞踊」「民謡」などなど、見学や体験させられる可能性のあるものは実に多い。

これを地方で、地域で行えるカリキュラムにつくり変えて実施できれば、国際貢献や国際交流に波及する成果として、かなり期待できる。日本に来る客人は、少なくとも日本に関心の高い人々である。また、反対に観光やボランテイアで外国に出かける人々も多い。出かける先々で日本文化について問われる。語学力より日本文化に対する造詣の深さに注目される。大都市圏で、日本人がひととおりの日本文化について学ぶことは、カルチャーセンターのセミナーならまだしも、経済的な負担も含めかなり困難なように思える。地方であれば、文化人や趣味人のネットワークを地域で構築して対応できるのではないだろうか。地方だからこそ出来ることは、意外に多いと思うのだがいかがだろう。