10月2012

生態系への配慮と地域活性化

生活

 ようやく秋冷を楽しめるようになってきた。本年をこれまでを振り返れば、多くの人の大きな関心の中に、地球環境と異常気象問題が挙げられることだろう。思うに、これらのテーマは、今や地球に住まうすべての人々の関心事に違いない。もはや「百年に一度の異常気象」という表現や「観測史上初の」という形容詞も陳腐化しつつあり、「異常であることが常態化しつつある」に違いない。

コウノトリの保護で有名になった兵庫県豊岡市で、「コウノトリが育つ米作りで地域が経済的に潤う」という調査報告が、昨年発刊された。

その報告書の要旨は、「地方自治体が生物多様性に配慮した施策を打ち出すことで、地域経済の活性化や住民の生活向上が実現できる」とする報告書である。

発表したのは、国連環境計画(UNEP)などが主導する「生態系と生物多様性の経済学(TEEB)」のプロジェクトチームである。

ご承知の通り、豊岡市の試みはコウノトリが野生復帰できる生息環境を整える必要がある。そのために餌場となる水田に小動物が増えるように米の無農薬栽培を奨励し補助金を出してきた。直接的には、補助金を出して環境保全を図る事業のようにも見える。実際は、コウノトリの野生復帰を目指す活動が観光客を呼び込んだ。COP10では、世界的に失われた生物多様性が一番の注目を浴びていたが、豊岡市の試みは、生態系に配慮した政策によって、経済的な価値の創出も可能なことを示している。

 

前出の「生態系と生物多様性の経済学(TEEB)」チームによれば、生態系の破壊による損失は、世界で年間最大で4.5兆ドル(380兆円~1ドル=約¥84.5)に相当すると分析結果を発表している。報告書の結論として「自然の恵みは、持続可能な費用対効果が高い解決策を提供してくれる」としている。地域ぐるみの活動が実り豊岡市で増えたとされる観光客であるが、国連環境計画(UNEP)によると、以前に比べ1.4%の経済効果があったとの試算がある。これを少ないと見るか多いと見るか。

いずれにせよ、維持するにしても莫大な予算がかかる環境保護活動において、

費用対効果を示せるような事例があることが驚くべき事例なのかも知れない。

赤ちゃんは、欧米でコウノトリが運ぶといわれてきたが、コウノトリの野生復帰が生み出す環境は、未来を担う世代にとって好ましいに違いない。本年は、さらにトキの成育環境に適した水田でつくられたコメが、ブランドコメとして認知されたというニュースがメデイアで取り上げられていた。環境への配慮はコスト負担ではなく、ブランド投資のようである。トキを贈った中国も日本も世界に冠たるCO2廃出国。望まれることは、環境先進国に向けた舵とりと。