11月2012

グランマ・モーゼスを知っていますか?

生活

 幸せとは何か?と問われると、多様な価値をもつ人がいるので、簡単ではない。人の数だけ定義がありそうな気もする。信心深い方々は、朝夕、自分の幸福の座標軸に自らの行動を照らし、直向に生きようとされていることだろう。

本稿は、洋の東西や政治経済のことを離れてみたい。

 

さて、心理学の巨人ユングは、幸福の定義として以下に5条件をあげている。

1.        健康であること。

2.        自分で程よいとおもう程度のお金を持っていること。

3.        美しいことを知る能力をもっていること。

4.        人間関係を豊かにすること。

5.        朝起きたときにやらねばならない仕事があること。

いかがだろうか。3.の美しいことを知る能力は、たとえば「感動」する能力が衰えていないということである。人は、感動することを忘れたときに老けるというし、感動によって苦悩を解消し精神衛生を保っているともいわれる。

4.の人間関係が豊かであるということは、長年の努力の賜物である。また、他人への思いやりがなければ、豊かに人間関係は実らない。そして、5.の朝起きたときにやらねばならないことがあるとは、自ら課題を掲げて生きる積極的な生き方と自己啓発の賜物だろう。生涯現役の気概が感じられる。

 

グランマ・モーゼス(本名:アンナ・メアリー・ロバートソン)という夫人がいた。彼女は、七十歳半ばまではニューヨーク州郊外の農場で一農婦として、趣味を持つゆとりもなく働き通していた。やっと、七十歳過ぎから絵を描き始め、百一歳までの間に次々と素晴らしい農村風景を描いた。そして、1949年には、トルーマン大統領からワシントンで功労賞を受賞される名誉を得る。グランマ・モーゼスは、七十歳過ぎから百一歳までの間に千六百枚の絵を残しているらしいが、ニューヨークのメトロポリタン美術館やパリの国立近代美術館、モスクワのプーシキン美術館など名だたる美術館に絵が収蔵されている。

農婦の仕事は、楽ではない。厳しく辛い仕事の連続である。彼女は、自然と真正面に向かい合い、自然を畏敬の念で捉え、絵を描く気持ちを高めたのだろうか。彼女の描いた絵画の素晴らしさは、賞賛に値するに違いない。しかし、最も評価されるべきは、七十歳を過ぎてから人生に挑戦するという果敢な勇気であろう。誰も彼もが、彼女のように才能を開花させられないかもしれない。しかし、七十歳過ぎから取り組んだ絵画で能力を開花させた事実は、多くの人に前向きに生きれば、潜在能力を爆発的に開花させる可能性を期待させてくれる。七十、八十は、洟たれ小僧!。まだ、幸いに間に合う。どんなことでも良い、小さくとも良い。自分なりに、やりとげたいことを人生で開花させよう。生まれてきた意味をかみ締めながら、生き抜こう。そして、堂々と逝こう。

背中が丸まって、うつむき加減の多くの日本のお父さんたちに応援歌を。