11月2012

切ない思いを乗り越えて

生活

 日本人の死亡原因に癌が1位となって久しい。およそ、死亡原因の半数が癌ということになる。したがって、癌になること自体は珍しいことでもなく、告知されたとしても医学の進歩も目覚しいので、患者とその家族の受け止め方も変わってきている。

昨年実施された日本能率協会総合研究所の調査。結果を見ていて心が痛むような思いをした。調査結果によると、死亡原因である癌になった場合に心配なことについて、「死」よりも「治療費(経済的負担)」を挙げる人が多い事が明らかになったという。複数回答で聞いたところ「治療費(経済的負担)」が72.3%で最も多く、以下は「死」(55.5%)、「痛み」(53.3%)と続く。調査結果では、自信が癌になる可能性を聞いたところ「あると思う」(非常にあると思う)「ややあると思う」)が55.3%を越えた。他方「どちらともいえない」は35.4%、「ないと思う」(「あまりないと思う」「まったくないと思う」)は8.2%。

 

癌になった場合の対応についての複数回答では、「かかりつけの医師・担当医師がすすめる治療を受ける」が44.1%で最も多く、以下は「自分で最も良いと思う治療を受ける」(41.5%)、「費用がかかっても先端医療を受ける」(18.7%)と続いた。

また、癌は治る病気だと思うかと聞いたところ、「そう思う」(非常にそう思う)「ややそう思う」)が44.1%で最も多かった。「どちらともいえない」は41.2%。「そう思わない」(「あまりそう思わない」「まったくそう思わない」)は14.7%だった。

死因のおよそ半数が癌であれば、当然癌にかかる率は高くなる。ましてや癌が治るとする観測も手術後5年生存という基準を基にした考えだろうか。身近な人間を癌で亡くすことが長寿社会では珍しくない。死に向かい合い何を考えるかは、当事者の問題ではあるが、こと延命や治療のことになると物心ともに家族の大きな負担が伴うので、当事者だけの問題だけでなくなる。

「癌」になった時に、「死」の苦痛より「経済的な負担」を気に病む姿は、無性に切ない。命を長らえることが苦痛になるなどと、世情が一昔前と変わり果てたものだと寂しい思いになる。先ごろ、「先に臨終の事を習うて、後に他の事を習うべし」という教えについて話した。死をしっかりと見つめ、向かい合っての生だという生死観だという話だった。どんなに寿命が延びても医学が進んでも、死はなに人たりとも逃れられない。まずは、しっかりとした生死観を保ち、その時、どうするのかしっかりと自分で答えを見つけておかねばなるまい。

 

 

世界の先頭をゆく超高齢社会の日本。経済分野での影響力が、衰えてきているといわれる日本ではあるが、日本で生きる人々の動向が、長寿社会の問題点に向き合う国々やその先の世界の動向にも大きく影響もするはずである。なかなか進まないわが国の税と社会保障の一体改革を注視しているのは、日本国に住まう市民ばかりではないようだ。