11月2012

魚の食文化大国というけれど

生活

 近年、ワシントン条約に「地中海クロマグロ」を加える案が、浮かびあがったが、その時否決され、安堵したわが国の水産関係者は多かったはずである。しかし、安心はできない。環境保護問題や動物保護問題によって、いよいよ利害衝突が先鋭化していることを見れば、寒い思いがしてならない。

たとえば、南極海での捕鯨に異を唱え、手段を選ばず妨害活動をするシーシェパード。彼らが、和歌山で隠し撮りされたイルカ漁の映画「コーブ」の上映会で日本を非難する活動を精力的に行った実を見るにつけ、わが国の漁業関係者が、日本人の魚の食文化について、理解してもらえる活動を十分にしているとも思えず、寒さが増す思いである。彼らは、明確にクロマグロを標的にしており、近い将来、大間々のマグロ一本釣り漁師とシーシェパードの衝突が起きるかもしれないと危惧せざるを得ない。

 

その昔、日本人の海外旅行の体験記を呼んで噴飯したことがあった。レストランでのやりとりである。食通を自任する旅行者が、うまいものを食べさせるという欧州のレストランでボーイを呼んだ。旅行者:「君、この魚はなんという魚かね」。ボーイはシェフのもとに行き確認し答えた。ボーイ:「シーフィッシュです。旅行者:「・・・・」。旅行者は、すかさず「それじゃ、この魚はなんという魚かね」。ボーイは、ふたたびシェフのところに行き戻ってきて答えた。「リバーフィッシュであります」と。旅行者は、あきれて「もう、いいよ」となったようだが、魚料理に対して欧州の人々が、日本人や東アジアの人間のように造詣が深いとは思えない。海に棲む魚か、川に棲む魚かわかっているだけでもたいしたことなのかも知れない。ちなみに、その場に私が居合わせたら、鰻は「シーフィッシュかリバーフィッシュか」とこのボーイ君に伺ってみたかった。

ほかにもこの手の話はある。

大きなマグロを欧州のとある港近くのレストラン見つけた旅行客が漁師に聞いた。旅行客:「ご主人、この魚は、なんという魚かね」。漁師:「なんだ、そんなこともわからないのかい。教えてやるよ、ツナだ」。旅行者は「そんなこと、わかっているさ」とつぶやきながら、「じゃあ、あれは」とこぶりのマグロを指差したずねた。漁師は、「あれもツナだ。」といったらしい。ムキになった旅行者は、そこでカツオらしき魚を指差し、名を問うた。漁師もいいかげんにしてくれといわんばかりの表情で「わかんねえのか、あれもツナだ」と。大きなツナ、小さなツナ、青いツナ、黒いツナ、鼻先のとがったツナ。敵さんらは、「ツナ」でくくって不便はない。食文化を押し付ける前にすることがありそうだが。