11月2012

公共財を活かすのは、結局は市民

生活

 知人に東京都内で、主として義務教育課程にある児童や生徒とその家庭の

教育支援を目的とする地域NPOの理事長の方がいる。

そのNPOは、文京区を活動拠点としている。たとえば、小・中学生の補修に対しては、東京大学をはじめとする大学院生らによって、疑問が解けるまで、納得できるまで懇切丁寧に教えてもらえるNPO組織である。勉強だけでなく、サッカーなどのスポーツの指導を専門家から受けることができる。受益者負担はあるが、一般の学習塾やスポーツクラブとことなり、地域密着で指導を受けられる点が何よりも良い。文字通り文京区は、東京大学やお茶の水女子大学の研究拠点や校舎、筑波大学の研究機関、伝統や実績のある私立大学の活動拠点などもある文教地域である。地域社会と密接に結びついて、活動の実を挙げることは可能である。実際に、地域の特性を生かして成果を子どもらにもたらしている点が評価できる。

 

大学が、直接、児童や生徒たちに補修を行うことは出来ないが、市民らが組織化して介在することで、質の高い補修を提供することはできる。

欧米の公共施設は、創立こそ官費で行われているものがほとんどではあるが、

その後の運営管理は、NPOでなされている例が多い。例をあげると図書館、音楽ホール、体育館や運動施設、病院、福祉施設、そして大学なども。

 

結局のところ、公共施設の受益は市民に還元されてゆくのだから、積極的に市民らに運営管理をしてもらい、ノウハウを蓄積してもらうことは望ましいことだと思われる。近年、指定管理者制度が生まれ、民間事業者や市民団体による応札落札が増えているが、よいことばかりでなく、過当競争により受注金額の低下が賃金デフレを助長しているという批判もあがってきている。

 

かつての名門ホール、新宿宿の厚生年金ホールが閉鎖して2年ほどになる。この施設は、ホテルと結婚式場、大規模ホールによって構成され、1961年オープン。以後、高度経済成長とともに国民的厚生施設としての任を全うしてきた。会館本部棟は、カメラの博物館として活用されることにきまっていたが、現況はどうかわからない。交通の便利もよく、こよなく愛されてきたホールは使命を終わらされることとなったが、このホールに愛着を持っていた歌手のさだまさし氏は、文化行政を「バカモノ」声を大にしてと批判した。ホールは文化財であり、支えるスタッフの育成も含めた重要性の認識が足りないとのことである。

さだまさし氏の見識は、ごもっともであるが今に始まったことではない。

ハコモノ行政などといわれるが、もともと運営にかかわる人材や関係する人材の育成、市民に対する啓蒙が十分でない。

 

たとえば、公立美術館。購入する美術品は、金額を基準にして購入することばかりが多く、美術関係者を利することばかりだったのではないだろうか。欧米にかぶれているわけではないが、展示を経済的な価値に軸足を置いてきめず、

文明の成り立ちや文化的な系統や血脈に基づき行うとか、維持修復を行う専門化の育成など行えば、単なるハコモノで終わる美術館などなくなるに違いない。

翻って公共のホールとて、ハレの日の舞台に終わらせず、音響、照明や舞台製作の教育の場として活用すれば、文化的な雇用創出の役割も担えることだろう。欧米とは、税制の違いなどもあり、単純な比較などできないが、文化財を創設後も維持保全する観点において、地域住民やNPOの積極的な関与を呼び込み、価値を創出してゆくやり方に学ぶことは多いのではなかろうか。この先、人口の激減や税収減により、公共財の維持管理は、困難が付きまとう。しばし立ち止まって考えてみることが必要ではなかろうか?