12月2012

血行障害から心筋梗塞へ~黒字倒産現象

生活

 米国で憂慮された「財政の崖」、わが国でも憂慮された「予算執行停止」。

官民いずれにあっても資金不足は、人の体にたとえて「再生不良性貧血(金

欠)」である。むろん家計にあっても「消費経済」から「再生不良性貧血(金

欠)」とつながり、「血行障害から心筋梗塞へ~黒字倒産破産現象」と展開す ることが想像できる。

すこし、掘り下げてみたい。わが国においては、「財政上の理由を大きく掲げ、平成の大合併を行ったにも関わらず、財政問題が厳しい状態にある地方公共団体が70%以上ある」「さらに財政的な安定のために。可能なかぎりの策を地方公共団体がとる」ことを言明している。まさに資金繰り悪化は、酷い「血行障害」状況。体質改善を行わねば、この先は「心筋梗塞」の思いが強い。

 

このたびも近代経済史や会計原理をつかって病巣の確定と処方箋を試みてみたい。まず、西暦1930年、NYの証券取引所が引き金となったブラックマンデーのことについてふれておきたい。この悲劇が起こるまで人類は、資本主義が万能であるかのような錯覚に陥っていたであろうし、株式会社こそは、人類最大の発明のように思っていたふしがある。この悲劇の側面を覗いてみたい。

1920年代のアメリカは、第一次世界大戦後から世界経済の牽引車として急勾配の山を登る機関車のようにしゃかりきに走っていた。経済の規模拡大は、一本調子に膨張するが如くであった。理由を経済学者や歴史学者は、それぞれに語るだろうが、会計学徒として、以下のふたつをあげたい。まず、信用経済の急激な発達。そして、これにつながる交通網の急速な拡大である。前者と後者は、お互いにつながる部分があり、あえてひとつとしておきたい。

ひたつめは、巨額の固定資産増大である。信用で調達した資金を溜めてダムをあちらこちらに作った。巨額の資金をあちらこちらでせき止めて、お金のながれは、ちょろちょろ川下に流れる。川下がひとたびお金の旱魃に見舞われると途端に干上がるのだ。お金のながれは、必要な時にこそ、使えなければ意味がない。前者の信用経済とは、端的な例では「掛売り」「掛買い」の増大である。挫折を知らず走り続けた経済は、具体的な危険負担など省みずに膨張を続ける。当然、バスに乗り遅れまいと誰もが急ぐばかりで、危険負担は十分におこなわれていなかった。景気は加熱していて、つくればどんどん売れる。だから、後払いを約束して、自分の力以上の仕入れを掛買いでしまう。仕入れた商品は、景気が良いのだから、あとで集金したらよいとどんどん掛売りしてしまう。

当時のアメリカ中で、世界中で、信用経済の特急バスに押すな、押すなと乗り込み、暗黒行き一直線の高速道路に乗ってしまった。

経済が拡大基調の中で、社会資本整備に巨額の資金投下がなされてゆく。良い例が、鉄道網である。鉄道は、莫大な鉄路と人的な労力を飲み込みながら伸びてゆく。伸びた鉄道は、遠隔地に大量の物を運んでゆく。交通網の発達は、さらに信用経済を拡張させてゆく。信用経済が膨張すれば、鉄道も伸びてゆく。しかし、金融システムが膨張する経済の中で、十分な信用創造、信用保証システムは構築することが追いつくことが無かった。

 

話は、変わる。中国は、漢の高祖、劉邦の最大の理解者にして賢臣の粛何(しょうか)という人物がいる。劉邦は、長年の項羽との戦いに明け暮れた節目で、粛何が第一の手柄を立てたと功労を認めたことがあった。これに反感をもった将軍連中は、戦場で命のやり取りもせず、矢も飛んでこないところにいた粛何がなぜ論功の第一かと劉邦に迫った。劉邦は、将軍達が戦端で安心して敵に向かうことが出来るのは、粛何が食料や物資を確実に届けたからであると言い放つ。1930年当時、アメリカ人たちが史記を読んでいたら、この話を聞いていたら、結果は大いに違ったかも知れない。

ブラックマンデーは、経済という戦場で補給線を考えずに戦端を只管拡大させ続け、消耗し自滅してゆく姿に似ている。信用経済の拡大と交通網の発達は、体に置き換えると手先や足先の毛細血管まで血流がスムースにゆかない血行障害に似ている。そして、黒字倒産とは、計算上は儲かっているが、お金が入ってこない状態で(栄養は摂ってはいるが、栄養が全身に行き届かない)、知らず知らずのうちに、心臓の周りの毛細血管が詰まり、心筋梗塞で命を落としてしまうような状態である。近年のサブプライムローン禍もリーマンブラザース禍も、実態の伴わない信用経済の膨張が直接的原因だが、複雑で難解な金融工学を生み出してしまった人類は、すでに経済の実態を理解することが出来ない状況にあるやしれない。実は、このことが最大の危機ではないかと。

 

話を転じて、現在の中国に。

リーマン。ブラザース禍直後も中国は、四兆人民元とも言われる財政出動を行い、景気を刺激し、信じられないほどの経済回復を見せてきた。他方、

過度に支出されたインフラ資本が、償却できない巨大な固定資産となって、

中国の巨大な体の血のめぐりを悪くさせている。鉄道の不良化資産も数兆人民元に上るといわれている。心臓の調子が悪いランナーが、心筋梗塞を心配しつつマラソンに望むようで、わが国にとっても中国依存の経済実態は大きく、心配が尽きない。