12月2012

貸借対照表と損益計算書を映画に例えると

生活

  本コラムでは、以前、西暦1600年ごろの欧州香辛料貿易船(東インド会社)が、そのまま「当座企業」という企業の発生形態であったことを紹介した。この当座企業の出現の後に、仲間や会社などをあらわすCAMPANYやCREW。多分に、この時代の船乗たちの運命をともにするもの同士の気分が、語源になったのではないかと思われる。

ところで、「資産」が、「収益」(事業収入)に対応して、時間とともに「費用化」してゆく様を「減価償却資産」の発祥「競走馬」で本コラムで紹介した。「空を飛ぶように走る馬」、そのような馬であっても、鮮やかな印象を人々の心に残しながらも、時間とともに劣え、価値が減少する資産と考えて評価される。どんな駿馬の走りも、時が奪ってゆく。時間は、この後も人間にとって、もっとも有効利用されなければならない資源である。

 

さて、1980年代に人的資源会計という考え方が随分と普及した。人材を育成するのに、投下された金額を資産計上しつづけ、定年までにいかに貢献する人材かということを推し量ろうとした。長い期間をかけて、投資が必要な事業である場合、投資額を資産として計上しようと言う考えは、終身雇用が当たり前の世界では合理的だったのかもしれない。あるいは、終身雇用制が壊れた後、再就職やヘッドハンテイングの報酬(給与)査定に、これまでの投下済み資本総額証明書や残存資産価値証明書の添付が必要な時代が来るかもしれない。

 

ところで、「空を飛ぶように走る馬」の映画をつくるとしよう。

「空を飛ぶように走る馬」の勇姿は、映画館の大看板やポスター、パンフレットを飾る「スチール写真」になる。これは、静的な「貸借対照表」、あるいは「財産目録表」に例えることが出来る。それでは、「躍動感あふれる空飛ぶ走り」はというと動的な「フィルム」に例えられ、「損益計算書」ということになる。フィルムには、スチール写真にはないストーリーの移り変わりをあらわすことができる。大航海時代に成果配分を行う場合は、全ての財産を換金して配当したので、清算には財産目録という「スチール写真」が重要だった。ところが、企業が当然に継続的な活動を行うようになると、投資に対する配当、つまり期間損益計算重視に世の中が変わってしまい「フイルム」重視になったということである。

さて、「スチール写真」と「フィルム」があれば、大方、映画はつくることができるのか?「ノー」である。三番目に重要なものが、映画の良し悪しを

決めてしまうのである。

 

三番目に重要なものは、「スチール写真」と「フィルム」とでは説明できない映画の重要な物語の進行を補うために生まれてきた。例えていえば「シナリオ」「脚本」類である。会計人の仲間うちでは、「資金計算書」とよばれている。なぜ、財政状態を示す財産目録的な「貸借対照表」と経営成績を示す収益力を反映させる「損益計算書」の二つだけでは、どうして不足なのだろうか。ヒントは、世界大恐慌の破綻原因や当座企業と現代企業の違いを見比べると直ぐに理解いただけるとおもう。それは、期間損益計算というシステムの欠点を補うものである。「信用販売」を大きく手がけると「売上」は伸びるが、そのほとんどが「掛売り」である。他方、「仕入」も「掛買い」で大幅に殖やすことになる。さて、取引がいつも平準化していて変動がなかったり、季節需要や特別需要が起きなければ別だが、期間損益計算をおこなうと普通は、「発生」と「実現」に時間差が生じてくる。「発生ベース」で計算された「利益」は、かならずしも直ぐに現金類に形が変わるわけではない。「支払」をいつも現金振込みでおこなうとすると、「実現」していない「売上」は、手当てに回せず不足が生まれてくる。これが、「勘定足りて、銭足らず」状態である。いつも、今、会社の全財産はいくらか?という覚悟で「貸借対照表」は見ると良い。「資本金」は、本来、債権者への弁済に第一に使われるべき性格のものである。そして、「損益計算書」の計算には、「実現していない利益」

や「実感のない財務」などがあり、「貸借対照表」(財産目録)との間で修正して「真の実現利益・財産」を把握する必要がある。それを行うのが「資金計算書」ということになる。

 

固定資産税をはじめ、税金の滞納や国民健康保険料の滞納が、入るを図る財政問題になっている。その中には、個人事業主などは前出の「実現利益」の問題で資金繰りに困っている善意の人たちが含まれているだろう。他方、税務計算には、税を支払える能力があるとされる「担税力」とよばれるもが「根拠」になっているが、「課税適状」と「納税適状」に差が生じている。「真実の支払能力」は、「財務会計」でも「税務会計」でも重要な課題である。