1月2013

おでん と 関東炊き

生活

ある著名な作家が、行きつけの居酒屋の親父に揮毫を請われた。しばし、考え込んでいた作家は、一気に筆を走らせた。店の親父は、喜色満面となり直ぐに額装し、店の正面奥に掲げたという。ある時、知ったかぶりをする常連が、若い者を連れて来ていた。「書」の本人がいることを知らずに、しったかぶりの御仁は、その「書」を誉めまくった。そして、若い部下に解説したという。「その雄名は、九つの江河に轟く。男は、かくありたいものだな」と。それを聞いた件の作家が驚いた。口に入れていた熱い「おでん」を飲み込んでしまい眼を丸くした。作家は、「おどろいたな、そんな意味があるなんて」といい。ただ、此処の親爺の店の一番売りは、「おでん」だと言いたくて「雄伝九江」~おでん喰え~と揮毫したのだというオチである。

 

「おでん」の由来は、もともと「田楽」による。あの「味噌田楽(でんがく)」の「田楽」である。その「田楽」も古くからある「田楽芸能」に由来する。

今冬大ヒットの映画「のぼうの城」でも演じられていた田楽踊りの田楽である。その田楽芸能の芸人らが、竹馬を逆さにしたようなものに乗って芸をしたので、その様にあやかり、タネを串に刺し山椒を効かせ味噌つけて焼いた「木の実田楽」が生まれた。さらに、そこから串にタネをさして煮る料理が生まれる。田楽の頭に「お」をつけて「おでんがく」、さらにこれを縮めて「おでん」というようになったらしい。

さて、関東では、「おでん」は「煮る」料理である。関西では、「炊く」といういい方をする料理である。関西でいう、いわゆる「関東炊き」のことである。その昔、給食の時間の献立表に「関東炊き」はあったが、「おでん」は無かった。関東では、「釜」を用いると「炊く」であり、「鍋」を用いると「煮る」である。関西では、「釜」を使おうと「鍋」を使おうと「炊く」にどうやらなるようだ。そうなると「鍋焼きうどん」は、関西風では「鍋炊きうどん」が正しいのだろうか?博多を中心に、九州全域で冬季に鍋の代表格「水炊き」。高級地鶏のだしを生かし、白濁湯が出来るくらいに「炊いて」愉しい。関東風に直訳すると「水煮」だろうか「湯煮」だろうか。しかし、これだと美味しさや愉しさが伝わらない。せめて、「地鶏鍋」というくらいに言っておかないと雰囲気が伝わらないだろう。

 

今期の冬は、今のところ概して穏やかである。しかし、立春を迎えても、本格的な春にはまだ間がある。さらに、旧暦の正月までまだ日もある。

せわしい世の中である。完全に手を休め、立ち止まって自らを省みることもなく、歳を越してしまった御同輩。旧暦の正月までには、本年の目標と計画をしっかりと据えたいものである。1日(ついたち)は、もともと「月立」「遡日」と書いた。「月立」とは「つきをたてる」、「目標や計画を立てる」日と先人は説いた。君子は自らを反みるというが、なんとかこれに倣いたいものである。