1月2013

正月気分のうちに打撃王のDVD鑑賞はいかが

生活

 6年ほど前の正月の頃、「故ルー・ゲーリックのユニフォームが、オークションにかけられ40万2500ドルで落札され、売上金は若い野球選手たちの育成資金にあてられる」というNEWSがあった。礼儀正しい紳士で、野球を離れても評価が高い人格者だった。親孝行でもあったゲーリックのことだから、育英資金にオークションの売り上げがなったことは地下のゲーリックにも嬉しいことだっただろう。ルー・ゲーリックは、一般的にはベーブルースのようには耳になじみはないにしろ、野球史上に打撃王として燦然と輝く星である。

野球をしたことのある男の子なら、誰しも一度はプロ野球選手を夢見るかも知れない。だが、社会に出て様々な洗礼を受けるうちに夢を見る勇気がしぼむ。

学校を卒業して数年間は、親も社会も寛大でいてくれる。だが、三十歳の声を聞くようになると手厳しくなる。三十歳を過ぎれば。自らも省みる力も出てきて、心身の均衡も保てるようになる。四十歳を過ぎ仮面をつけたような気分で人付き合いも出来るようになる。五十歳になり分別臭くもなる。こうなると、感情の起伏を押さえることも出来るようになるが、他方、本を読んでも映画を見ても、若い頃のような湧き出る感情が枯れたかのような思いになることがある。「打撃王」は、ルー・ゲーリックの生涯を描いた1942年製作の映画である。何度見ても彼の真摯な生き方と人とのかかわり方に学ぶことが多い。私は、彼の引退を覚悟するシーンで彼の心情を慮り、毎度も毎度落涙。

 NYの貧民街で生まれた少年は、母親が名門コロンビア大学の寄宿舎の賄いおばさんとなり育てる。11歳ごろからメジャーリーグの選手にあこがれるが、母親のエンジニアにしたいという願いもあり、苦学しながらコロンビア大学に通う。エスタブリッシュメントの子弟がそろう名門大学で、貧しさを嘲笑されながらの学生生活は、映画とはいえ観ていて気分が滅入る。野球の夢捨てがたく、母親に内緒でヤンキースと契約をしてしまうが、やがて母親の知るところとなる。ルーは、好きな野球で親孝行したかったのだ。その後の活躍は、歴史に名を刻すとおりである。「3番」は、いわずと知れたベーブルース。「5番」は56試合連続安打記録、マリリンモンローの元夫のディマジオ。我等が、ゲーリックは「4番」。史上最強の4番打者といわれる割には知られていない。ゲーリックの代名詞は「鉄人」。そして、なんといっても連続試合出場記録「2130」。この記録を広島カープの衣笠が破り、引退してまだ年も浅い元メジャーリーガーのカル・リプケンが破った。が、野球通のファンは認めようとしない。ALS~筋萎縮性側索硬化症(ルー・ゲーリック病)を患わなかったら、きっと記録は長く伸びただろうと信じられているからである。病の恐怖に立ち向かい、引退式でファンへ心からの謝辞を捧げる彼の態度に熱いものがこみ上げる。正月気分が抜けない人には、ぜひお勧めの作品だと思う。