2月2013

「あなたを忘れないため」に、あなたの思いを辿るに違いないのだから。

生活

  本年1月26日で、李秀賢(イ・スヒョン)氏の十三周忌を迎えたことになる。李秀賢氏のことは、ご存知だろうか?。2001年の1月26日夕、新大久保

駅のホームからよって線路に落ちた乗客を懸命に助けようとして、カメラマンの関根史郎さんとともに轢死した。このことが、特に多くの人々の心に残っているのは、李秀賢氏は轢死を避けて逃げることが出来たにもかかわらず、最期は電車に向かって手を拡げ最期まで、救命しようとしていたということである。人を救うために、自らの命をあっさりと擲った韓国人留学生の姿勢は、他人にはとかく無関心な態度でやり過ごす多くの日本人に衝撃的な出来事だった。

その後、李秀賢氏の行動を風化させてはいけないという思いから日本韓国

両国の映画人による映画「あなたを忘れない」が共同制作された。小職は、プロデューサーと面識があったので、請われて広報のお手伝いと600字という制約で、映画のチラシに刷込む『追悼文』を担当させていただくこととなった。本来ならば、十三年忌を催すべきだろうが、高齢の両親の希望もあり、十年忌以降は、執り行われなくなった。せめて、李秀賢氏に思いを馳せ再び、追悼文をささげるしだいである。

 

「追悼文」

日韓両国は、本来、血脈的にも地理的にも、司馬遼太郎氏や海音寺潮五郎氏が説くように英米両国のようにあって然るべきである。両国の間には、いまだ不寛容の氷河が、横たわっているように思えてならない。氷解の日まで、膨大な月日を費やさねばならないことだろうか。つきつめると国と国とのつきあいも個人的な付き合いの総数に違いない。それぞれが、かの国の人を尊く思い、親愛の情を抱けるならば、政治問題化させて神経質にならずとも良いはずである。ところで、あの日、李秀賢氏の取った行動は、なんら躊躇がなかったように思える。困った人、弱い立場の人を救うのは、儒教の国に生まれたものとして当然だといわんばかりに。彼を追悼する意味で作られた最初の映画ポスターには、腕を前に突き出し広げている様子が描かれている。彼は、実際に亡くなる直前に、かように電車の前に立ち塞がったのだと聞いた。彼の本気で、電車を止めたかった思いが伝わってくる。彼は、息をする如く、ごく自然に善と正義に生きたかったのだと確信する。

さて、李秀賢氏の行動は、結果的にあまりにも衝撃的である。日本人は、彼の信条や生き様を理解するのに実像に迫る事が出来ずに惑うばかり。朝鮮半島に住まう人にさえ、理解不能な事象として置きざりにされかねない。日韓両国が、お互い不寛容な態度で向き合うこの時代。「あなたを忘れない」ためにこの映画を支えたいと願い望んで私たちはここにいる。