3月2013

お水取り

生活

 三月も十三日の寅の刻、奈良は東大寺の二月堂で「お水取り」の行が行われる。「瀬々のぬるみもこの日より」といわれるくらいなので、多くの信者や観光客も早々と用意をして待ちわびた末に駆けつける。メデイアもよほどのことが無い限り、お水取りの記事や画像の配信は全国に送りつけなければならない。

 

水取りや こもりの僧の 沓の音 ~ 芭蕉



暦を読むと毎年東大寺で三月一日から二週間続けて行われる修二会(しゅにえ)の一環とした行事であるという(実際は二月二十日から厳しい修行に入るらしい)。草木も眠る寒さ厳しき春浅い未明に。僧が修練衆を従えて「若狭の井」

から香水を汲み上げる行事である。このありがたい水のことであるが、井戸が若狭の国と地中でつながっていると信じられてきた聖水ある。

先人の信心も相当なもので、この水を病人に飲ませて快癒させるという進行も生んだのだ。地元、関西の方々もよほど信心が強い方ばかりなのだろうが、壮大稀有な信仰である。

奈良の冬は厳しいのだが、修二会の終わりのころは井戸に張る氷ももはや薄く、お水取りにふさわしいころとなるということらしい。

信心のあるなしに限らず、神社仏閣の行事はなぜ?「どうして?」を聞いてみないと合点が行かないことが多く、また聞いてみると先人たちの思いが偲ばれる。九星気学(陰陽五行説)では、春は、青や碧や緑の色であらわすとともに。東の方位から風が吹いて始まると考えられてきた。菅原道真公の「東風吹かば にほひおこせよ 梅の花 あるじなしとて 春なわすれそ」の東風こそは、春風が吹いてきたらと思えばよい。大学駅伝でも良く知られる熱田神宮の東門は、春の風が吹いて来て門をたたくという意味があるらしい。東は、春の入り口ということになる。

 

皇太子殿下一家のお住まいである御所は、言わずとしれた東宮御所であるが、

時代を遡ると春宮と書かれていた時代もあったそうだが、読み(発音)は、「とうぐう」のまま通したらしい。この国は、漢字を輸入し、ひらがなをこさえたたり、あて文字をつくったりと伝統的に読みや発音を重視するようだ。

春駒(はるこま)だからか、春をあらわす色の青(陰陽五行説)にちなみ、「蒼(あを)」と読んだりしたのだろうか。きっと、碧のたてがみが美しい馬だったことだろう。その後、白い馬を用いて神事を行い「白節会」となっても、読み(発音)は、「あをうまのせちえ」のまま。そのまま読んでも、呼称と異なる多くの命名に祈りや願いがこめられているのだろう。「あを(お)」や「ひがし」にちなむものが多いだけ。春を待ちわびる人々の思いも深いことだろう。