3月2013

柔らかく記憶を包む懐かしい味

生活

  昨今は、陽気も穏やかで適度に乾燥した空気が心地よく、ビールが美味い。

本来、胃腸の調子がよくないので、控えたいところだが、ビールは健康飲料なので片目をきつめにつぶって呑む事にしたい。ビールには、プリン体が含まれているので、遺伝的に高脂血症体質のわが身には多少心配だが、なんといっても健康飲料である飲むことにする。第一ビールには無駄がない。ビール粕から調味料が取れる。かの優れもののエビオス錠は、妊婦さんが飲んでも副作用がない唯一の薬品だといわれる、ビールが生んだ傑作である。エビオスとは、開発したビール工場のあった恵比寿の地名とバイオを掛け合わせた造語である。

ビール粕からは、良質の飼料や肥料も取れる。アンドレジッドではないが、「一粒の麦」がもたらす、拡がる命のもたらす恩恵のなんと大きいことだろうか。

ビールは、液体のパンとも言われる。ビール党のこじつけた話ではない。

チグリス・ユーフラテス川流域、今のイラクの地で、豊かな実の麦を穀物倉庫に保管していた。ところが、天の恵みの雨と陽の光の恵みが降り注ぎ、倉庫の隙間から中にしのび込んだ。番人が、うっとりするような甘い匂いに気付いて、倉庫の甕を確かめたところ、パンにする予定の麦が、黄金色の液体になっていた。

爾来、この地ではビールのことを液体のパンという。

 

私の記憶の中、液体の麦とは、「水飴」のことである。

事情があって、乳飲み子の私は、父方の祖父母と一番幸せな時を過ごした。

その記憶の始まりは、祖父母と過ごした時の暮らし振りそのものである。

 

祖母は、私の口に入るあらゆるものを丹精して作ってくれた。

おやつの代表格が「水飴」である。まず、麦に水分を十分に含ませ発芽させる。

続いて、麦芽を発酵させる。かなりの量の麦芽を発酵させる。二次発酵の途中

で、ゆるい水飴状態のものを煮詰める。思うに、60Lくらいのものを何昼夜

も煮詰めて、粉ミルクの2L缶に2つくらいにする。

この時の麦芽の甘さは、今も味覚を支配している。

おやつは、毎日、希望どおりに作ってくれた。明治女が、揚げパン風ではあったがドーナツも作ってくれた。それも「かぼちゃ」が練りこんであったりしてなんとも甘い。やさしい甘さが記憶を包んでくれていて、なにかの拍子に頭をもたげてくる。今、見直されている「食育」の根底は、労を惜しまないことのように思う。味覚は、幼児期に容られる。私は、幼児期に芋が好きになった。祖母は、底冷えのする日、芋焼酎の銘品伊佐美をお湯で割って猪口に一盃飲ませて寝かしつけてくれた。今も焼酎のお湯割りは、安らかな眠りをくれる。