4月2013

日中韓三カ国は、協調して経済成長を図れるか

生活

  日本銀行黒田東彦総裁の市場の想像をはるかに超えた金融緩和政策は、

発表後直ちに、米ドルをはじめ、主要国の通貨に対して大幅な円安となり、

さらにそれを受けての株式市場も日経平均株価を大幅上昇させている。

 

日本国内では、デフレ経済脱出を不退転の覚悟で試みるという政権と

日銀首脳に対し、概ね歓迎ムードが高いのだが、マイナスの影響を懸念

する中国と韓国の経済関係当局からは批判が漏れ伝わっている。

基本的に、相対的に自国通貨が強くなることは歓迎すべきことであるが、

世界市場のパイが大きくなり、恩恵をお互い享受できない限りは、どこか

で必ず不満が噴出するものだ。限られたものを奪い合うのであれば、ゼロサ

ムゲームとなり、プラスを享受するものの他方で損失を蒙るものが出るこ

とは必然のなりゆきである。

 

中国は、2000年以降毎年10%以上の経済成長を果たしてきたとされ

るが、人民元の一本調子のような上昇を抑えるために、実質、国の管理の下

で外国為替をコントロールしてきた。未だに米国をいらだたせている。

中国にとって、大きな貿易相手である日本の円が、大幅安になると獲得外

貨を米ドル資産に代えて保有し、運用する中国のうまみが少なくなる。さら

に、日本との競争分野では、円安によって中国の競争力が相対的にマイナス

になる。したがって、二重の意味で不満が大きくなることだろう。

韓国は、さらに円安に対し、極端な敵対発言に近い反応も見せている。

韓国は、2010年からの3ヵ年でGDP比でマイナスに転じてきている。

すなわち、2010年マイナス6.3%、2011年マイナス3.6%、

2012年マイナス2.0%である。加えて財政赤字が深刻化してきてお

り、2012年は2兆ウォンに上っている。世界経済の好転により、景気

が上向くことを期待していただろうが、円安に大きく振れると、精密部品

や工作機械を輸入して生産を行う韓国企業には大きなプラスになっても、

輸出競争力が、そがれるので激しく価格競争を行っている分野では大打撃

を受けることになる。



輸出に対する依存度は、日本が20%程度、中国が50%弱、韓国は10

0%弱である。円安傾向が、三カ国のFTA交渉や成長戦略や経済政策の協

調に大きく影響することは確かである。そして、日本をFTAに取り込まなけ

れば、市場の価値や自国戦略にもマイナスになる中韓のジレンマも大きい。

中国の経済成長に関する見方

生活

 日中韓三カ国FTA交渉は、ようやく緒についた。

三カ国は、それぞれ国内に複雑な事情を抱えているが、世界のGDP比にして

20%の市場を形成しようと努力している。このことは、特に中国の人口が形成する市場に、三カ国それぞれが期待を寄せているからではなかろうか。

 

さて、2000年以降10年間も経済成長率10%以上を達成してきた中国

だが、社会の安定的な発展に必要とされる経済成長8%維持(いわゆる保八)が出来なくなった。

このことを悲観的に考える立場と楽観的に考える立場に大きく分かれている。

悲観的に考える立場は、当面、必要と考えられてきた社会資本いわゆるインフラ投資も適わなくなり、次第に投資全体がしぼみ、それによって経済成長は鈍化してゆくと大方の主張である。

反対に楽観的に考える立場は、経済成長を支えるには経済的な価値の産出は

大切であるが、一番重要な要素は消費であり、その点で考えると中国には消費を旺盛に支える人口が膨大であり、過度な心配は必要ないという主張である。

 

ところで、日中韓三カ国は世界でも稀に見る経済成長を実現してきたが、三カ国のうち中国だけは、人口ボーナスを享受することなく、2015年からの人口減を迎えることとなる。日韓国は、高度経済成長をそれぞれ過去最大の人口時に迎えており、経済成長の恩恵を国民全体で余すところなく享受した。

他方、中国は経済が低成長の時代から人口増加問題に苦しんでいたことから、”一人っ子政策”に舵を切らざるをえない事情もあった。

 

投資の分野では、社会資本投資以外にも経済成長を大きく支える投資分野が

ある。先進の設備投資であり、将来の研究開発投資である。

中国は、改革開放経済の方針の下、外資企業を誘致し、あらゆる産業で合弁企業を発足させてきた。この点では、大きく技術導入による産業育成を図れたことだろう。しかしながら、中国民族系企業の時代を拓きゆくような開発投資は、さほど盛んに行われてこなかった。

市場への供給が過剰となってもブレーキが壊れたかのように、過剰な生産を

繰り返し、不毛な競争で市況を悪くするなどの事態に陥ってきた。

また、官尊民卑風潮もあり、民間企業のチャレンジを支援する仕組みは、十分には整ってはいない。中国が成長をさらに続けるためには、巨大な市場を抱えていても、必要な資金が適時適切におこなわれるかにかかっている。

米韓FTAによる恩恵、日系メーカーに追い風

生活

  4月に入り、日本銀行黒田東彦総裁は、初めての政策金利決定で国内外の

市場の予想外な金融緩和政策をとった。このため、対ドル円相場は2円以上

も下がり、しばらくは円安基調が続くと思われる。

となると世界の市場で凌ぎを削る韓国との通貨戦争もしばらくは、有利に

展開するだろうという予測の下、経済も動いてゆくことだろう。

 

米国と韓国のFTAの締結により、米国産日系自動車メーカーの韓国輸出は

強い追い風を受けている。ここのところ韓国は、自動車やスマートフォンな

どに代表される工業製品について、デザイン開発において海外メーカーとの

提携や開発投資に力を入れてきた。国際金融市場で、大幅なウォン安是正、

反転高騰があり、輸出に大きく依存する自動車メーカーや家電メーカーの勢

いが無くなっているとはいえ、強烈なナショナリズムもあって、先進国や新

興国にあっても韓国国産車のい市場占有率は圧倒的な強さがある。

 

韓国ウォンの対主要通貨に対する上昇傾向が進む中、割安感の出てきた輸

入車のシェアがようやく10%を越えたという。

日中韓三カ国FTA交渉においても自動車関税の扱いは、もっとも注目され

るところであるが、日系メーカーの対韓国市場開発について、米韓FTA締結

により米国産完成車が自動車ショーなどで攻勢を一段と強めている、

 

米国産とはいえ、日本から輸出される自動車と品質や概観に違いはない。

少しでも、本格的なFTA締結前に市場占有率を高めたい日系メーカーの鼻息

は荒くなる一方だろう。

韓国は、EUと2011年に、米国とは2012年にFTAを締結している。

農産品の取り扱いで、農業従事者との間でひと悶着あったようだが、輸出依

存高い韓国政府は、さらに輸出強化のために国内事情に多少眼をつぶっても

FTA締結を進めた。

デザインばかりか機能面でも充実する韓国ITメーカーや自動車メーカーが、

主導的な役割を展開し、関税も大きくのしかかる日本製品は、もはや韓国製

のライバルではないという雰囲気が欧米の市場ではただよっている。いや、

アジアやアフリカも含めて、日本国産製品や日系メーカーの製品は韓国製品

に、簡単には太刀打ちできそうにないところまで追い詰められた状態だった。

米韓FTAの恩恵による前哨戦で勝ち抜いて、日中韓FTA締結によって円

高是正効果も追い風に、本格的に反転攻勢ができるだろうか。

日中韓FTA交渉、サプライチェーンの行方

生活

 日中韓三カ国におけるFTA交渉では、それぞれが複雑な国内事情を抱えて

おり、譲歩無き主張合戦や合意の先送りなどが続けば、市場形成の期待の裏

返しとなり、市場の失望は図り知れないほどに大きくなることだろう。

他方、日中韓の協調により、三方両得となることも期待される。

例えば、裾野の広さ大きさから、様々な期待が寄せらる自動車産業であり、

家電産業である。

 

東日本大震災が日本を襲い、日本経済に与えた生産現場へのダメージが予

想以上に大きかったが、高度な生産技術を必要とする精密加工部品や生産に

直接関係する工作機械の輸出が停滞したことにより、中韓両国に与えたダメ

ージもかなり大きかった。

 

同様に、記憶に新しいところでは、日系自動車組み立て工場や同部品工場

や日系家電工場が、タイ国の水害によって生産停止に長期に追い込まれ、イ

ンドシナ半島や中韓両国や日本国内にいたるまで、機能しないサプライチェ

ーンがアジア地域や世界経済に与えたダメージもかなりショッキングなこと

であった。

小異を捨てて、非常時にも力強く機能するサプライチェーンの構築は、日

本以外の中韓にも大きく経済成長にプラスに働くことだろう。

 

なかんづく、日中韓三カ国がそれぞれに領土問題や海洋資源問題で激しく

主張を先鋭化させている中でも、FTA交渉が予定通りに俎上に上った事実に

鑑み、関税撤廃による自由貿易だけでなく、サプライチェーンの強固な構築

が如何に経済成長に寄与するかについて、認識はなされていることだろう。

 

交渉は、投資やサービスなどの比較的に合意に至りやすい事案から始まっ

ているが、本格的な交渉に入れば、中韓両国の輸入完成車への関税や重要基

幹部品に対する関税の大幅な引き下げを主張する日本と激しくぶつかること

も予想される。

サプライチェーンの構築とともに、タフな交渉に期待が寄せられる。

 

日本にしてみれば、韓国自動車市場で米韓FTA締結により恩恵を受けては

いるが、世界最大の自動車市場で、韓国車は無関税で、日本車は25%課税

というような競争にもならないような事態に陥ることは避けねばならない。

花のいのちは短くて苦しきことの多かりき

生活

 行楽シーズンである。彼の故森光子女史をして、「でんぐりか返し」を有名にした出世作は放浪記。林芙美子の心象風景と文学碑が、桜島にある古里温泉に似合うかと言えば、返答に窮する。が、実に美しい歌の文学碑であることに異論はあるまい。

 

古里温泉の泉質は、豊かで湯治には相応しいと思っている。その点、この歌碑を見に行こうと考える方には、良い御駄賃になるだろう。しかし、古里温泉の前後の道行きの風景は、稜線も海岸線もすっかり溶岩に覆われ、旅装を解く人の心を和ませる気分ではない。

 

花といえば、桜花。

花の命は短くて、と桜を愛する殆どの日本人の共感の波動を起こさせている。

惜しまれて散り逝く人の命。春爛漫の空に美しく咲き誇り、あまりにも早く

散り急ぎ、散りすぎる花。桜の歌に傑作が多いのは、日本人の情感がそうさせるに違いない。

春は、桜花とともに眺めを愛でる時節。あるいは、散ったあとも懐かしむ花。

春は人が好む最高の季節。そして桜は、心象風景に咲いている花。

散り逝く桜、さらにこれから散り逝く桜。それでも人の心にいつも咲く花。

かの大盗賊、石川五右衛門の歌舞伎でも有名な舞台は、南禅寺山門。

「絶景かな。絶景かな。春のながめは値千金とは小さなたとえ、この五右衛門が目からは万両。もはや日も西に傾き、まことに春の夕暮の桜はとりわけひとしお。はてうららかなながめじゃなあ」~(山門五三桐)。

歌舞伎で語らせる台詞ゆえ、大仰な感じがしないでもないが、石川五右衛門が史実に語られるとおりの存在で、なおかつ大盗賊であるならば、加えて大教養人としたほうがいいようにも思う。

 

橘に菖蒲、藤と淡く咲いても、溢れんばかりのまばゆい陽射しに映える花が、

これからの咲き誇る。惜しむべきは、商業主義が推し進めた利便性が、皮肉な事に、口で味わう旬の愉しみも、眼で味わう旬の愉しみも奪っている事である。

国学者が好んで用いた大和の敷島は、穿った言い方をすれば、四季の花島のことではないかと思っている。

敷島の

大和心を人とはば

朝日に匂う山桜花

~本居宣長~

対中FTA交渉での期待分野

生活

 21世紀に入ってからも米国は、スーパーパワーであり続けているが、一

時期、国際競争力の低下から保護主義に傾いていた。その流れで、世界的に

保護主義の潮流が強まりかけていた時期もあった。

今は、関税完全撤廃、あるいは条件付関税撤廃の下、FTA(自由貿易協定)

の締結交渉が盛んであり、決められない政治の現われで、ひとり先進国と新

興国で日本だけが出遅れていた印象が強い。

 

日中韓の市場は、GDP(国内総生産)の世界全体に占める割合にして20%

の巨大市場である。特に、GDP換算で世界第二位の中国と同三位の日本の交

渉の行方は、アジア圏のFTA交渉の動向にも影響を大きく与える違いない。

対中交渉においては、中国国内の産業育成方針に基づき、関税が大きく欠

けられているものがあり撤廃に期待が集まる。関税率の大きなものには、自

動車が一番めに上げられるが、続いて工作機械、化学製品などが挙げられる。



実は、対中国貿易品目の約7割に関して関税が残っており、これらの取り

扱をめぐる交渉(対韓国でも約6割)によっては、大きく輸出が拡大される

可能性があり、これら業界団体の期待値は高まっている。当然、日本として

は、対中交渉では関税の残る分野について、関税の撤廃や大幅引き下げを迫

ることだろう。



反対に中国は対日交渉に農産品の関税撤廃や大幅引き下げを求めてくるこ

とが予想される(韓国も農産品については同様と思われる)。国内屈指の圧力

団体であるJAのかたくなな態度を見れば、いやおうなしに交渉は暗礁に乗り

上げてしますことだろう。

農産品は、命や健康の問題に直結するだけに、基本的な取り扱い方にブレ

があってはならないが、他方、農業が生んでいる雇用や生産額は、日本経済

全体では、ほんのわずかでしかない。他方、東日本大震災被災地の復興事業

を描こうとする場合、農林水産業が長く地方の基幹産業としてきているだけ

に配慮も必要である。付加価値の高い、競争力のある農産品を生産する事業

主らは、FTA締結をビジネスチャンスだとみなしているようだが、自然相手

の産業ゆえ、弾力的な政策が必要であることは間違いない。厳しい攻めぎあ

いの予想されるFTA交渉であるが、締結がTPPに大幅に遅れをとったり、

中韓二カ国による交渉のみが締結されるようであれば、日本にとっては大打

撃であるが、他方、中国にとっても世界第3位の経済大国を同一経済圏内に

取り込めないのは、相対的影響力の低下とFTA圏の価値低下を招くだろう。

日中韓の国際金融トリレンマ

生活

 日中韓によるFTA交渉は、いずれにせよ締結させねば、EUと北米に遅れをとり、縮む世界市場の分捕り合戦で歩の悪い戦いを強いられることになるだろう。大同小異はあろうとも、FTA交渉を成功裏に導きたいところである。

 

さて、FTA交渉で鋭く主張がぶつかりそうなものは、明らかに食料など経済的な価値以上に安全保障にかかわってきそうな分野や雇用問題につながりそうな分野だろうと想像がつく。

さらに掘り下げようとすると国際金融のトリレンマにぶつかってしまう。

国際金融のトリレンマとは、貿易取引、資本取引、金融取引分野でそれぞれ目標を達成しようとしても、同時期に2つの目標が達成できても、3つの目標を

同時に達成することが困難であるとされる問題である。

 

日本は、自由な国際資本移動を保証するグループに属し、金融政策を運営し、

1970年代以降、為替の変動相場を導入し、為替の安定を放棄した。そのため、為替相場の急激な乱高下によって、大きなダメージを受けたりもした。

「自由な国際資本の移動」と「国内の金融政策」の目標は達成できても、「為替相場」の目標は達成できないということである。

 

通貨危機を体験した韓国の場合、日本と同様に「自由な国際資本の移動」と

「国内金融政策」の目標達成に力を入れていた。しかしながら、IMF(国際通貨基金)主導による金融支援によって、安部内閣と日銀で実施中の「インフレ・ターゲット」を導入したのだが、韓国はもともと外国資本に大きく依存していたため、資本の逆流にかなり苦しんだ。したがって、現在は資本規制を行い、

「国内金融政策」と「為替相場」の目標を達成する方向に転換している。

 

さて中国であるが、貿易により外貨を獲得し、多額の米国国債を頻繁に購入

してきたのは、人民元の急激な対外貨相場が、上らないようにすることに重きがなされているのは事実である。国家主導による為替コントロールについては、

批判が大きいところである。貿易立国として強国を目指す中国であるので、全く「自由な国際資本の移動」を保証したり、景気が加熱してホットマネーが急激に流入し、投機熱が不動産の高騰を招き、住居を求める多くの人民の不満に中国首脳も応えたいところである。かような理由から、「国内の金融政策」を完全にコントロールしたいところではあるが、「為替相場」目標管理を重視すれば、現在、取り組むべき優先順位を「自由な資本移動」に置くか、「国内金融政策」に置くべきか、経済大国中国もジレンマに陥るのである。

日中韓FTA交渉における自動車の扱い

生活

 先に韓国と米国のFTA締結により、米国内で生産された日本メーカーの自動

車が恩恵を受けており、価格競争力と排気ガスや燃費などの高付加価値によって新たな市場を開発できそうであると伝えた。

自動車は、3万にも上るパーツで組み立てられており、完成車組み立て工場を頂点に部品工場などの裾野が広く、雇用力が大きな産業である。

 

それだけに、FPA交渉(経済連携協定)でも自国の雇用の確保や競争力の維持や強化を念頭においた厳しい交渉の的にもなる。

日本は、現在EUとのFPA交渉に入っているが、自国に自動車産業を抱える

フランスやイタリアが日本車の輸入急増を警戒し、EPA締結に慎重な態度を崩さない。韓国は、すでにEUとFTAを締結しており、対EUとの競争において

日本は価格面においては競争相手ではない。

反対に日本にとっては、EUとのEPA締結によって自動車関税の10%

や液晶テレビ関税14%の大幅な引き下げが市場拡大を期待させる。

 

さて、日中韓のFTA交渉でも自動車の扱いは厳しい交渉になりそうな気配である。理由は、EUとのEPA交渉のところでも出した自動車産業の雇用力の大きさから、三カ国それぞれが、一定の雇用を確保する政策が採られる可能性が大きいと思われること。

そして、中国においては、自動車産業の再編成が本格的に進んでいないこと

もあり、乗用車関税25%、工作加工機械同じ9.7%の引き下げを容易に行いにくい環境にある。

さらに韓国においては、自動車の主要部品であるギアボックスの関税が8%

となっているが、引き下げれば、輸入車の割安感が高まるのは明らかである。

 

三カ国のFTA交渉は、ASEAN+日中韓の東アジア包括的経済連携の基本的な枠組みとなる可能性が大きく、いかに自由な市場を確保しつつ、自国の利益を守るかという点では、厳しい交渉の連続が予想される。

 

さらに、米、EU、日中韓の世界三大市場が、いかに競争しながら連携してゆくかという問題もある。その中で、交渉参加に出遅れた日本は、巻き返せるのかどうか。決められない政治の過去数年間で浦島太郎のような日本は、経済連携や関税撤廃交渉で、主要国の後塵を拝するようなことにでもなれば、国内の

社会制度を維持できないくらいに経済の基盤が根底から崩れることだろう。

日中韓FTA交渉下の韓国経済

生活

大きな相反する国益を抱えて日中韓の三カ国FTA交渉が始まった。

合意すれば、世界のGDPの20%を占める巨大市場となる。EU27カ国

の市場が規模が、世界のGDPの25%を占める規模であることからも北東

アジア三カ国の市場の大きさは世界の注目の的である。

三カ国によるFTA交渉であるが、現実的にはFTA大国韓国と中国との

FTA交渉が先行している。日本が、交渉の展開によっては、先行する二カ

国から厳しい局面に追い込まれる可能性もありえる。日本も国際的に聞こえ

たタフネゴシエーターを用意して万全を期しているいようではあるが。

 

さて、すこし韓国経済に関して心配なことが出てきた。

韓国は、GDPの50%をゆうに越す金額を輸出依存している(中国も50%

弱であるが)。このことは、為替動向によって極端に貿易収支や競争力が影響

を受けるということにほかならない。

はたして、韓国ウォンが10%高くなると貿易収支も10%程度悪化する

という。

 

2012年末の統計によれば、GDPが1272兆5000億ウォンに対し、

韓国全体の借り入れ残高が、3607兆3000億ウォンに上っている。

実にGDPの283%に上る。この数字は、1998年から翌99年にかけ

て起こったアジア通貨危機時の227%や2008年のリーマンショック時

の274%を悠に越える数字である。

 

韓国の輸出品では、競争力のあるデジタル家電、IT機器はすでに日本製品

との相対的な価格優位性を失ってきており、競争力が後退している。三カ国

FTA締結は、紆余曲折があると思われるが、韓国がFTAを既結させている米

国産の日本メーカーの自動車が恩恵を受けており、日本車の占有率が極めて

低い韓国にあって、日本メーカーの自動車のFTAによる恩恵が早くも現れて

価格競争力と高い付加価値で韓国市場の開拓が確実視されている。



日本の金融緩和政策は、無期限無制限を本気で唱えているだけに、韓国の

ウォン高が続けば、韓国経済の縮小にもつながりかねず、また日中韓FTA交

渉に後退を招きかねない心配の種にもなりそうである。

経済は、ゼロサムゲームだけに競争相手との相対的な関係が大きく影響す

る。北朝鮮の挑発軍事行動も頻繁に起きており、韓国の動向に注視がしたい。

 

HONDA。魂の承継

生活

 ひさびさに、HONDAがF1復帰を目指しているというNEWSを耳にした。

世間では、単なるNEWSとして報道されているようだが、HONDAイズムと

呼ばれる精神性の高い理念を掲げる企業ゆえに、人、それぞれに重く、そして、人それぞれに感銘深い思いあることだろう。

小生は、HONDAをめぐる印象深いこととして、4年前の9月下旬の静岡県立病院に入院していた手塚啓太君のことがある。手塚君は、当時12歳で小学六年生。急性リンパ性白血病で、それまで懸命に闘病していたが、9月に入ると手を動かすのが精一杯というほど衰弱していた。

手塚君の夢は、F(フォーミュラー)1関係の仕事に就くこと。男の子らしい夢である。これを子ども病院で聞いた難病の子どもたちの夢をかなえるNGO-メイク・ア・ウイッシュ オブ ジャパンのスタッフから、HONDAに相談がなされた。驚いたのは、HONDAが即決し、翌日には県立子ども病院にF1カーを持込んだということだった。手塚君の体に力が湧いたのは明らかに見て取れたそうだ。

 

「やはり、HONDAだ。」という感想が、思わず小生の口から無意識に出てしまった。HONDAの創業者本田宗一郎は、静岡は天竜川流域の生まれ。いまだ自動車が珍しかった時代。少年は、生まれ故郷ではじめてカーチス号を見る機会があった。いたく感動した少年は、排気口に顔をつけて排気ガスの匂いをかぐなどしたという。そして、心ひそかに「世界で一番速い車をつくる」と誓うのだった。

その後の本田宗一郎氏の伝説は、世界の人々の知るところだが、少年が誓いを立てた日から72年後、音速の貴公子アイルトン・セナと組んで、F1でコンストラクターズチャンピオンとなった。鍛冶屋の倅の晴れ舞台だった。

その瞬間。テレビで見ていたが、私は目頭が熱くなり涙が止まらなくなった。

「私の右手が語る」や「得手に帆をあげて」など本田宗一郎氏の著作を読むことが多かったので、彼の少年の頃からの夢がかなったことが自分のことのようにうれしかったのだ。

ところで手塚啓太君は、F1カーだけでなく、ドライバーなどのお見舞いなどを受けて、自分は幸せだと両親にいっていたという。なぜに、純粋で無垢な命を病は奪うのかとやるせないが、少年は逝ってしまった。少年は、自分の夢の一端に触れられて、本当に幸せだったのだろうと信じたい。そして、世界企業となっても、本田宗一郎氏の魂が承継されているHONDAがなんともうれしかった。企業は、利潤をあげる以前に、人を幸せにするためにあるに違いない。

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