6月2013

アジア通貨危機時の国際協調支援を振り返る

生活

 1997年のアジア通貨危機を克服した国々は、それぞれに国難と向かい合 い乗り越えてきた。通貨危機は、アジアだけでなく世界の国々にも負の影響を

もたらしている。

ところで、アジア通貨危機によってダメージの大きかったのは、タイ、インドネシア、韓国の3カ国である。アジア通貨危機の共通する要因は、①米ドルと外国為替を実質的に固定性のドルーペッグを採用していたこと②巨額の短期借り入れ負債があったこと③金融決済システムが脆弱であったことなどがある。

引き金となったとされるのは、米ドル高が続いたことにより、国際競争力を失い、経常収支赤字が急激に増えて悪化し、投機筋が通貨に対する信任を拒否して、一斉に売り浴びせを行ったことによると考えられている。これら3国では、投機筋が売り浴びせを行う直前までは、旺盛な資金需要に応えて、外資からの短期資本が流入していた。

 

タイの場合は、投機筋の売り浴びせには、通貨当局も為替介入を行って通貨防衛を行った。だが、いかんせん外貨準備が枯渇してしまい、米ドルーペッグ制は終焉を迎えた。

インドネシアの場合は、このときまで続いた独裁開発体制(当時スハルト大統領)の維持について、国外から懐疑的な見方が広まり不安が高まっていた。

この時、IMFが主導する構造改革路線を進めようとしていたのだが、スハルト

大統領とは反発を強めた。そのため、社会不安が増長され、国際的信任をなくした通貨ルピアが暴落に向かってしまった。

韓国の場合は、1997年当時中小財閥が連続して破綻を起こしていた時期である。タイバーツが暴落して間もなく、起亜自動車が破綻。その余波もあり、起亜自動車のメインバンクであった韓国第一銀行が金融不安を引き起こし、一兆ウォンの特別融資が行われた。その後も、金融不安は解消されず、IMF支援と国際協調支援をパッケージにして受けることとなった。

 

アジア通貨危機時の国際的な通貨支援の規模は、タイ:インドネシア:韓国

=172:392:580(単位:億ドル)である。タイへの支援に関しては、日本はIMFに協調して40億ドルを支援している。インドネシアに対してはツーステップローン(政府を通して民間金融機関へ融資)を10億ドル規模で支援しているが、スハルト体制が崩壊したので、直接的な金融支援ではなく、政治的な動きを強めざるを得なかったようである。韓国には、IMF210億ドル

、世銀100億ドル、ADB(アジア開発復興銀行)40億ドルの協調融資が組まれたので、日本は100億ドル規模で二次支援の枠組みをつくった。

世界の隣人と支えあう仕組みが必要

生活

 いまや常態化しつつある異常気象に振り回され、砂漠化の進行や旱魃にともない、穀物生産が安定せず、相場も高騰してきた。サブプライムローン禍、リーマンショック禍による焦げ付き問題から投機筋の資金は、現物商品に向かい物価をあちらこちらで押し上げた。また、エネルギー事情が透明感をなくしてきた。かたや日本経済、三角買収が解禁後、アラブのオイルマネーや中国・ロシアなどの政府系ファンドの運用先に企業経営者たちは、不安にさいなまれ神経症患者のようにも見える。その昔、アメリカがくしゃみをすると日本が風邪をひくといわれた。いまや、地球上のどこもかしこも病巣だらけ。食料もエネルギーも輸入に頼る一方、安全保障や国民生活に欠かせない問題解決さえ、米国を初め他国に依存を高めているこの国の健やかな未来が描きにくい。

 

FAO(国連食料農業機関)の調査結果によると、エネルギー価格高騰がトウモロコシなどのバイオエタノール向けの需要に火をつけた格好になり、世界の穀物の備蓄量は現在最低レベル。結果、最貧国などの食糧事情が悪化。社会不安の黒い雲が地球のいたる所で深くたちこめているようだ。

主要な穀物である、小麦・トウモロコシ・米・油糧種子・を織り込んだ食糧価格指数を見ると、2012年までの過去5ヵ年の指数は、2008年の後半を除いて軒並み上昇してきた。5年ほど前は、トンあたり約200ドルだったものが、穀物によっては4倍以上になっている。途上国の人口爆発により、世界の穀物需要は増加の一途である。悪いことは重なるもので、小麦一大産地の旱魃、原油高による輸送コストの上昇など悲観的な材料ばかりが目につく。アメリカのバイオ燃料の需要の増加に伴い、トウモロコシの価格も、高騰し続けている。日本発のバイオエタノール技術で貢献できることは幸いであるが。

 

地球環境は、文字通り大きな生命の連鎖であり、食糧や健康の問題にまで深刻な影響を与えている。悲観的な材料が、穀物やエネルギーの深刻な高騰を招いているにもかかわらず、オイルマネーや為替準備高に余裕のある国々の政府系ファンドが投機相場に向かい、弱い立場の国々の食料相場を押し上げてしまい、すでに40カ国で食糧事情が悪化したための暴動が起きたという。2013年は穀物収穫量が、概ね上向く予想である。しかしながら、シリア、北朝鮮、コンゴ、マリ、スーダンで食糧が不足し危機的な状況にある。加えて低所得国の穀物生産見込みは悲観的な状況である。グローバル化して、人々は果たして幸せになったのだろうか。世界の弱者は、大切なものを奪われ続け、強者は富める一方。一刻も早く、新秩序を生み出せなければ、人類史上最悪の悲劇が迫ってくる。世界の隣人と生きぬく智恵を分かち合い、支えあいたいものである。