6月2013

中国における都市化のコスト

生活

 中国国務院は、2013年から2020年の8年間に「都市化」を重点目標

と掲げて取り組む意向であるが、ことは容易いものではなさそうだ。

なにしろ、都市化に伴う負担が大きく天文学的な規模になってしまう。

 

近未来の目標では、都市化の人口比80%を達成したいところであるが、その前段で、出稼ぎに出ている農民工の都市生活者化が暫時達成されることの目論みがある。その実現のためには、単純計算でも財政支出総額の50%以上を社会保障関係支出にあてることになるという試算である。これは、現在出稼ぎにでる農民工およそ2億5千万人のうち、1億6千万人程度が都市戸籍を希望すると見込んだ場合の試算である。

 

都市化のために支出の大きくなるものは、教育費、養老保険補助、最低生活補償費、保障性住宅費、これらは基本的公共サービス費といわれている。

2012年末の確定支出によれば、現況は1兆8千人民元である。

1兆8千億人民元のうち、最大の支出が社会保障関係支出で4、532千億人民元、続いて教育費2、165億人民元、医療衛生関係7、199億人民元、社会保障・就業支援12、54億人民元、保障性住宅関係4、444億人民元

と続く。したがって、現況に加えて1億6千万人の都市化を果たすと支出が、50%増しの2兆7千億人民元というおどろくべき支出額に膨れ上がる。

基本的な公共サービス費の負担率については、中央政府と地方政府で按分して負担する。

現況案では、財源負担を国と地方が23:77としている。さらに地方負担の77のうちの65%を東部大都市、残りを中小都市で負担すべきとしている(人口規模では、大都市1000万人以上、中規模でも600人以上小規模でもおおよそ300万人以上の人口を抱えている)。財源委譲の必要もあるが、単純に都市戸籍人口が増えても財政支出の合理化が進まなければ、まず実現されそうにない。

 

交付金を付け替えて、地方政府の支援を行っても、公務員への人件費支出

が多いばかりか、不効率な事業の整理統合が進まないと都市戸籍者を増やすことは期待できそうにない。

改革開放経済が、最初に始まった広東省であるが、農民工の出稼ぎ者も多く、そのため、農民工子女340万人のため毎年200億人民元以上の義務教育支出が必要といわれている。人口流入が極めて偏る傾向にもあり、財源の交付も

よくよく配分しなければ、都市化の後押しも厳しいことだろう。

重慶で行われていること。起きていること。

生活

 中国直轄都市の中で、存在感のある異彩を放つ重慶があらためて注目されている。北京、天津、上海、重慶のうち内陸大都市は、重慶だけである。谷底に

拡がるような大都市は、およそ3千2百万人の人口を呑み込んでいる。そのうち、1千200万人が都市部の人口で、2千万人が農民部人口であり、農民工として出稼ぎにもゆく人々である。

 

ほかの大都市圏同様に重慶は、都市部住民と農民部住民の経済格差が広がり、社会不安の大きな要素となっている。行政としても、格差是正策を打ち出し、成果を挙げようと必死のようだ。

重慶は、「西の上海」といわれている。人口も大きいが、潜在的な工業生産額など各種生産指数も大きく、中国全土からの注目度も当然高い。

 

重慶市は2008年12月より、「重慶農村土地取引所」が創設された。

このことにより、「地票」と呼ばれる農村における不動産証券が売買可能となった。これは農村部の住民が、売買を経て都市部に住居を求めて移り住むことさえ可能となったことを意味している。取引所創設以来、売買代金は、日本円換算にして1000億円を悠に超える金額と見なされている。この金額を得て、実に200万人の農民が都市部に移り住んだという。

 

この先の予想であるが、制度満5年を迎える2013年末までに、さらに

100万人。そして、このペースを保てば、2020年までに移住農民の総合

計数は、700万人に達すると見られている。このことにより、冒頭の段落で示した「都市部人口1千2百万人、農村部人口2千万人」としていたものが逆転し、「都市部住民1千9百万人、農村部人口1千3百万人」という逆転するとみなされている。このとき都市化が、人口比60%達成となる。

人口比の変化にともない、産業経済の様相も変化が生まれてくる。

重慶もほかの大都市同様に、人民政府および国有企業の財産が2007年当時、市全体の75%程度であった。現在では、民間セクターの比率が60%にまで

達しているという。



ところで、旺盛な民間資金需要に応えているのは、国有金融機関ではない。

中国では、国有金融機関は国有企業を相手にしか、融資に応じていないのが実情である。有利な融資条件は確保できないだろうが、沿海部のローエンド、ノックダウン、アッセンブリーに対して、高付加価値工業製品生産の一大拠点化を目指している。「都市化」を掲げる中国のモデルになりそうである。

中国都市化政策の課題

生活

 前温家宝国務院総理ならびに現李強克国務院総理が、力を入れて推進を図ってきているのが「都市化政策」である。都市化に力を入れる理由とは何か。

端的に行って、国家の安定のために必要ということであろう。

「保八」と呼ばれる”対GDP比成長率8%は、どんな状況であっても死守せよ”という悲痛な目標がこれまであった。社会の安寧と平和のためには高い経済成長がどんな時にでも望まれるということであった。

 

西部内陸部の成長やインフラ投資を考えれば、まだまだ相当な経済成長を期待され、かつ望まれると思われるが、長期に高度経済成長を継続すること自体困難なことである。現実的に、国家の安寧と平和のために何をなすべきかを思索した結果が、「都市化」ということであろう。

「都市化」とは、どういうことかといえば、農村戸籍の労働者を前提に考えられており、まずは「就業」ということである。続いて、定住することを前提に「住居」の提供。そして、安定した給与所得者に付与される「社会保障」ということになるだろう。

農村戸籍者は、都市戸籍者にくらべ能力開発の機会や訓練の機会に恵まれていない場合が多い。就労訓練や就業支援は制度として必要である。あるいは、マイクロファイナンスを用いた企業支援も有効だろう。ところで、大都市近郊の農村戸籍者と西部内陸部等の農村戸籍者の扱いを同じにするのだろうか。戸籍制度改革には、困難がありそうである。農民工として働くものと都市戸籍勤労者の社会保障内容の同一化が望まれて当然である。

注目したい事柄である。農民戸籍者の戸籍変更や労働者の社会保障問題以前に横たわる問題がある。たとえば、歴然としていることだが、農民戸籍者への就労への「差別」である。この差別は、農民戸籍者が良質な教育機会を享受できなかったことが大方の理由であり、解決は国家事業として行うべき性格の問題である。また、都市戸籍の勤労者は社会保障制度を享受しているのだが、農村戸籍者には、社会保障制度で守られていない。その代わり、その生活の糧をすべて生み出す源である農地があるようなものである。したがって農民の農地似たい尾する執着は強く大きい。他方、規模しい生活から発生した耕作放棄地も大きい。

反面、地方政府が、農地を一方的に接収し、開発を行ってきた事例も数え切れないが、今後、農民戸籍者に就業の機会や住居、社会保障を与えるのであれば、同時に農村集団所有農地と国有地になっている都市の土地の交換や利用のあり方も掘り下げて検討を要するところである。「都市化」は必然だが、巨額に上るコスト負担をいかに賦課してゆくことだろうか。

中国のTPP関心表明

生活

 先ごろ中国政府は、TPPへの関心表明を行った。

中国が、TPPに現実に参加するのか、またはできるのかは別にして、関心表明

を行うことは予想できたことである。さらに中国の環太平洋戦略上、無視できない存在にTPPがなりつつあるのは事実である。

 

米国は、近年アジア重視の戦略を見せており、軍事的なプレゼンスの強化にも力を入れてきているが、経済面での環太平洋戦略においてTPPは、最たる例である。

ここにきて、参加が出遅れていた日本が各三カ国より承認を得て、7月より

正式に交渉に参加することとなった。TPP参加国に日本が加わることで、米国の主導するアジア太平洋地域での経済貿易協定がいよいよ大きくなったことが明らかである。

 

中国は、日中韓FTA締結と東南アジアを取り込むRCEP締結において盟主に

ならんとしている。日中韓FTA締結については、3カ国それぞれに事の成否の重要性について認識しているが、一筋縄ではゆかないことは明らかである。

また、RCEP(東アジア地域包括的経済連携)については、TPPの進捗や方向性について、影響を受けることは明らかである。

さらに、日中韓において領土問題に対する主張の応酬が激化したり、南沙諸島問題等で南シナ海のおける領海をめぐる主張が当事者国間で先鋭化すれば、中国の思い描く影響力の行使は難しくなることだろう。

本来、これらの交渉は、アジア太平洋地域の自由貿易圏(FTAAP)構築のための主導権争いが前提である。米国にしても、中国にしても世界第3位の経済国

日本抜きの経済連携では影響力から見るとFTAAPを前提とする交渉は意味が薄い。

 

ところで日本は、アジア太平洋地域だけでなく、EUとの経済連携協定交渉に本年4月より入っており、加えて中国が先駆けて進出しているアフリカとの関係強化をTICAD(アフリカ開発会議)横浜開催を契機にODA(政府開発支援)供与の表明などを本年5月に積極的に行っている。

中国も李総理がスイスとのFTA交渉締結や訪問先での記者会見の機会に、尖閣諸島問題に関する日本への批判を強めている。単なる牽制のつもりなのか、経済連携や自由貿易交渉を見越しての深慮、戦略があってのことなのか不明であるが、TPP締結が本格的に見込まれる本年10月以降にならなければ、明らかになりそうにない。しばらくは、落ち着かない交渉や駆け引きとなりそうだ。

膨張し続ける中国の外貨準備金

生活

 2013年4月時点での中国の外貨準備高は、3兆4400億ドルにも達したという。この金額は、世界に冠たる経済国ドイツのGDPにほぼ相当する金額

であり、日本の外貨準備高の2.7倍相当額である。

2008年の統計を見ると2兆ドル程度だったことを考えると伸び率は相当

なものである。先進国がいずれも金融緩和に動いており、米日の資金が激しく流入していると見ている専門家も多い。

 

中国の外貨準備高が、増える直接的な原因としての説明は、輸出主体で稼いだ外貨で、競争力維持などの目的から外国為替の管理フロート制により、米国債の買い入れを行い、為替相場を常に予定の範囲内に誘導しているためだと。

 

世界経済は、ゼロサムである。経常利益総額は、かならず経常赤字総額と同じである。そうなると、中国の外貨準備高はあまりにも大きい。

新興国の外貨準備高の総額は、7兆ドル程度といわれている。中国は、およそ半分を占めている(ちなみに日本は先進国全体の5兆ドル規模の3分の1程度の規模)。

 

中国では、中国人民銀行がほとんど米国債購入に当てられた金額と同じ規模

で人民銀行債を発行し、民間銀行に買い取らせるオペレーションを展開している。これほどまでに大きな米国債の買い入れであるから、米国で度々問題となっている財政赤字の補填は、中国が買い入れた国際でまかなわれているといえよう。日本で財政赤字の補填のため、民間金融機関や国民が国債を買い入れる

こととは大きい違いがある。



さて、中国の不動産バブルの崩壊や地方政府主導による開発計画の失敗により発生している不良債権額は、いったいいくらに上るのか想像がつかない。しかも、金融緩和によって先進国から流れ込む資金は、2008年当時から過剰とされてきた生産設備や淘汰されるべき不振民間企業にも流れこんでいるに違いない。シャドウバンキングとよばれる実態や規模が把握できない金融市場が存在していることが知られているが、これらの市場規模は、正規の融資の3倍とも5倍とも言われるが実際のところはわからない。

 

不良債権が、驚くほどの規模に達しても、政府が地方政府や金融機関を救ってくれれば問題はないのだが、天文額的な規模の外貨準備高を使って救済できれば幸いである。中国の病が重篤ともなれば、即ち世界恐慌とつながる。

中国の兌換自由化実現と国際政治のトリレンマ

生活

 中国の資本項目の兌換自由化は、長期的に取り組めば実現できる目標だろう。

中国は、中央政府による独自の金融政策に力を注ぐために、国際金融においては、前出2つの目標を達成するために、いずれにせよ外国為替の管理強化をあきらめるか、徐々に市場にゆだねるしか選択支が無くなるだろう。

 

結局、この先、人民元為替レートが市場の信任を得て、為替レート決定の仕組みが合理的で、均衡の取れた安定性のある取引ができるように保証しなければならない。

現在のような管理フロート制から、国際市場に適応させてゆくには課題も残る。人民元建て資本項目の兌換自由化は、やはり容易いことではない。

人民元は、時間をかけては来ているが、対米ドルに長期的に高値取引傾向に

誘導されている。過去、5年、10年の対米ドル為替レートを比較すると、中国の国力の向上の度合いも見えてくる。だが、米国としては長期国債を大量に買い込んでくれるお得意様であっても、為替取引の現実的な適正レートから、

大きくずれているというアンフェアを主張する議会の声が大きいため、今後も批判にさらされることだろう。

中国は、資本市場開放を徐々に進めるとしているが、適格海外投資家と人民元適格投資家の後押しを得て、資本市場の制度改革を進める必要がある。

中国の内陸西部地域へのインフラ投資ひとつをとっても、健全な資本流入が淀みなくなされる必要がある。他方、急激な政治経済の変化によって、巨額の

クロスボーダー流動を防ぐことが重要だろう。直接投資が増やされることで経済は大きく前進するが、外国為替取引の管理の改革スピードをあげる圧力もかかる。対外債権債務の管理とともに、市場の監視をいかに行うかも大きな負担だ。



さて、国際金融のトリレンマに正面から向き合い国内改革を実現達成する中国には、さらにグローバル経済の一翼を担うが上の政治的なトリレンマが壁と

なって聳える。

即ち、グローバル化(国際経済統合)と国家主権(強固な国家の自立)と

と民主主義(個人の自由)の3つは同時に達成できないというものである。

中国は、明らかにグローバル化に早い段階から対応している。そして、国家主権を推し進めている。グローバル化に伴い、中国国民の対外活動の機会も範囲も増える。先進国や新興国との経済や文化交流が増えれば、民主化(個人の活動の自由の保証を求める)を求める国民の声は高まるのは必然であろう。この先、中国は経済発展とともに、政治的なトリレンマに苦しむことになる。

日・米・欧(EU)は、いかに国際金融トリレンマと向かい合うのか

生活

 先に、中国国際金融のトリレンマへの取り組み、特に資本の兌換自由化(流入流出)への取り組みと達成への困難をについてふれた。

為替フロート制により、長期的に安定上昇傾向を維持しているが、上昇角度が小さく変動幅も限られた範囲で行われるオペレーションであるにも限らず、世界的な経済情勢に影響を受けることもあり、困難な局面に当局が立たされることは多い。

さて、日米はどうか。

両国金融当局は、ともに「自由な資本移動」と「中央銀行による独立した金融政策」を執っている。そのため、「為替の安定を放棄(変動為替相場制)」している。

他方、EUはどうか。

EUでは、ユーロ導入国と独自通貨制度を保つ国とがある。ユーロ圏においては、

「単一通貨ユーロ(複数国で固定為替相場制)の流通」と「資本移動の自由化(経済的な障壁をなくし経済的には一体化)」を執っているが、金融政策については欧州中央銀行がタクトを執っており、加盟各国が独自の政策を導入することを排除している。



欧州通貨危機が表面化した2012年当時から、景気が落ち込んだ国々の政権は、景気対策として金融政策を放棄せざるを得ない状況は、想像を超えた厳しさがあるようだ。経済統合を目的としているのだから、資本移動の自由は制限するべきではない。そうなると、日米同様に「為替の安定を放棄」せざるを得ないという流れができてしまう。

EUは、金融政策を欧州中央銀行にゆだねているため、景気対策では財政出動に頼らざるを得ない。そうなると、当事者国だけでなくEU自体の信任を低下させるという悪循環に陥る。ギリシャ危機や南欧危機が続くが、欧州中央銀行の金融政策以外に、各国独自の経済政策があり、経済的な体力ののある国とない国との政策協調をいかに図って危機を回避するかについては、意見の集約にさえ時間を要する。簡単には行かない。

さて、「資本移動の自由化」に向けて歩むことを宣言した中国であるが、2007年から前日比0.5%以内という制限は設けつつも、変動相場への展望を見せている。問題は、急激な人民元の高騰を避けるあまりに、対ドル相場を予定の範囲に保つために、為替介入をし続けている。すでに、外貨準備高世界一になって5年になるが、米国債などを買い入れ続け、為替の安定を図ること自体が

困難な状況になってきている。はたして、中国独自の金融政策とグローバル化に則った資本自由移動を執って、為替の安定を放棄するのだろうか。

人民元の国際化に向けてのトリレンマ

生活

 先の5月24日、中国国務院常務会議が、「金利と為替レートの市場改革を確実に実施すること」と「人民元建て資本項目の兌換自由化の操作方案を提起すること」を発表した。この先、中国人民元の国際化を推進するためには、困難を伴う基盤づくりが迫られる。

過日、国際金融のトリレンマついて本コラムで取り上げた。

国際金融政策において、以下の3つの政策を同時に実現することが出来ないというものである。

・為替の安定(固定相場制)

・独立した金融政策

・自由な資本移動

 

日本の場合、自由な資本の移動を制度的に保証し、独立した金融政策を実施しているため、自らを利するような為替の安定が図れず、超円高の長く苦しい時期を耐えてきた。

中国の場合は、為替の安定を重点化し(管理フロート制)、中国人民銀行(中央銀行)による金融政策を自由に確保するために、外国との資本移動に制限を加えてきた。それを前出のように「人民元建て資本項目の兌換自由化」に舵を切るというが、簡単なことではなさそうだ。

人民元を管理フロート制の元におくがために中国は、外国為替市場と金融市場で金利平価が働くために、偏った政策運営を行うと価格決定システムが欠陥を生み信頼性を損いかねない。そのため、外貨の買い入れオペレーテイングに偏りはしたが施策を行い両市場を運営してきた。

 

仮に為替市場の自由化と資本項目の兌換自由化を実現するとなると、急な資本の流出に備えて制限を行えば、民間の対外投資や中国国内で短・中期で経常項目の黒字を積極的に相殺することを図らねば、中国人民銀行はさらに外貨準備高を増やし続けることになり、金融政策の効率は低下する。

資本流出を制限し、為替市場の多用な運営が出来なければ、さらに為替野で変動幅を調節できる自由度が損なうことになれば、為替制度自体が機能不全に陥る可能性がある。

資本項目の兌換自由化を促進し、資本が流入流出両方向から健全に機能させ、国際収支上で自律調整機能が働き、さらには為替レートの市場化推進を図ることは、結果として市場化に尽力しないと実現できないことである。

国際金融のトリレンマに向き合う中国の本気度はいかがなものであろうか。

並大抵の洗礼では、済まされそうにはないようである。

韓国の通貨危機当時、回避策に貢献した日本

生活

 中韓両国とは、良好な関係を築きたいものだが、両国とも歴史認識問題だけでなく、2013年初から続く円安基調に両国ともに苛立ちがありりうようで、さらにはFTAなど自由貿易圏にかかわる思惑もあって、なにかと衝突が騒がしい。特に韓国は、拉致問題解決のため北朝鮮と日本が単独交渉することが韓国の不利益になると踏んでいるようで、今後面子を気にして硬直化した外交路線に転じる可能性をうかがわせる。

 

さて、韓国は世界に冠たるFTA大国にして経済大国に間違いはないのだが、

短期対外債務を増やしてきている。「対外債権を増やしながら、対外負債を増やしているので、何ら問題はない」とする意見も承知している。問題は、その内容ということになる。1997年のアジア通貨危機のとき、被害が最大の国となった。ウォン暴落のきっかけは、対インドネシア債権がインドネシアの通貨ルピアの暴落により、回収できなくなるという見方が大方となり、売り浴びせを受けた。大きな債権があっても優良なものでなければ、消えてなくなるものである。

現在、韓国の保有債権の内容について、回収が確実にできそうなものは全体の4割以下という見方もあり厳しい。他方、対外債務については、短期債権が多く、全体の30%以上でインドやインドネシアよりも比率が極めて高い。外貨準備高のうち、即時換金が可能なものは僅かに5%以下という統計である。

このような体質は、1997年アジア通貨危機当時から変わって来ておらず、

未だ不安視されている。日米両国との特別枠のスワップ協定も更新されずに

終了した。大きなセーフテイーネットが2つ機能しなくなったも同然である。

韓国の債務のほとんどは、もともと民間金融機関のものであった。

アジア通貨危機当時、外貨不足からデフォルトが確実になったとき、日本は当局が音頭を取り、リスケジュールを取りまとめ、欧米諸国の説得に回った。

短期貸付のロールオーバーに応じてくれさえ、日米欧金融機関がすればなんとかなるということであった。主体的に動いた日本の当局と金融機関は、最悪の事態回避に向けてかなりの貢献があった。最悪の事態の回避があったがゆえにIMFの指導は厳しいものではあったが、韓国の復活劇はあったと思われる。

さて、国としての収益力が落ちてきた韓国の財務内容は、改善を早急に期待することは困難である。米国よりも経済面で韓国は、中国依存を高めているが、

韓国同様に対円安状況は、対外貿易で経済のほとんどを支える中国にとって、

収益力を削いでいる。中国の不動産バブルの崩壊もさほど遠くないとされるが、

巨億外貨準備高を始末にあてるとしても、中国主導のアジア太平洋自由貿易圏

づくりのため、FTA大国韓国を日米欧に代わり支援する余裕はあるだろうか。

景気後退でも人民元が切り下げられることはないのか

生活

 中国は、外貨を稼ぎ、外貨準備高を増やしながら、人民元の供給量を増やし

経済運営を行ってきた。若干の調整局面で僅かな値下がりすることがあったが、政府が実質的に為替を管理し、僅かづつ上昇基調を続けているとはいえ、基本的には上り調子一本である。

このような状況下で米国議会は苛立ち、たびたび強硬な態度を対中国で見せ

てきた。人民元は、東南アジアでは普通に流通する通貨であるが、国際通貨には未だなっていない。中国政府が、実質的に外国為替を管理できているのは、

逆説的にいえば、人民元が国際化していないからである。

 

ところで、人件費が高騰し、物価上昇は続く中国では、製造拠点としての魅力は少なくなりつつある(市場としての魅力は別として)。過日も述べたように

米国産業界の工場の米国内回帰の動きもある。

高度な経済成長が、中国で続いていたこれまでは、巨額の投機性資金が直接

的あるいは間接的に不動産開発資金などに投下され、さらに成長著しい分野にも潤沢に資金が投下されていた。だが、今は明らかに後退局面にある中国経済である。巨額な投機筋の資金は逃げることはないのだろうか?

現実的には、資金流出はあり得ることであるが、変動為替とはいえ実質的な

政府管理下に置かれていることが、ここしばらくは幸いするだろう。しかしながら、仮に人民元の切り下げが幾営業日か続く程度ならまだしも、切り下げ基調となれば、一気に事態が流出に傾き、歯止めが利かなくなる可能性がある。

また、アジア通貨危機の前夜までの様相を注視すると、通貨の暴落、浴びせ売りの直前までは、投機筋の巨額資金が流入一方だったことがわかる。いわば表面張力のような力が働くぎりぎりまでは、順調な金融経済の様相が続いたということである。これは、通貨危機の震源地タイに限らず、インドネシア、マレーシア、。韓国で同じようなことが言える。

 

さて、今後の中国人民元であるが、アベノミクスにより、きびしい影響が

あると予想できる。金融緩和により円安傾向は続くと思われるが、中国経済には、下方圧力となって働くことが予想される。そうなると中国政府としては人民元を本来切り下げたいところだが、切り下げれば米国から制裁が発動される可能性がある。中国に向かってきたホットマネーは香港経由で。流入全体の50%超えである。ほかの華人経済圏の資金も合わせるとグレーターチャイナマネーは相当な比率になる。それらの筋の資金は、不動産バブルの崩壊に至らないように支え、株価暴落も支えている。人民元を今後も小刻みに切り上げてゆくと対日本戦略で不利となる。しかし、切り下げる選択はできない。悩ましい。

« 古い記事 新しい記事 »