現代型華僑の実情

ビジネス

薄井 義之

「中瑞岳華会計師事務所」

今年になって、公定歩合、貸出金利、そして預金金利がそれぞれ引き下げられ不動産価格も落ち込み、株価も急激に値下がりが目立って来ている。この状況に敏感なのは政府のみならず、中国人富裕層の反応も顕著だ。

彼らがまず考える手段としては「国外脱出」である。富裕層の移住先として人気の高い米国の場合、海外からの富裕層をターゲットにした制度もあり、50万ドル以上投資すれば移民申請が可能となる。最近では中国人が各国からの申請者全体の7割以上を占めていると云われている。株価・不動産価格の低迷に歯止めが効かない背景には、富裕層の移住に伴う「とてつもない資金」の海外流出にある。国にとっては大きな損失だ。

海外メディアによると、特に薄熙来事件以降、移民ブームは更に拍車がかかり、中国国内の移民申請者が大幅に増えている。すなわち、目下の経済の不安に加え、中国首脳部の最大のスキャンダルと云われる薄熙来事件などの政治不安が複雑に絡み合い、それが富裕層へ大きな影響を与えている。

元来、中国には最早伝統とさえいえる「華僑」の歴史があり、驚くことではないかもしれないが、現代富裕層の移民と、かつての華僑の移民の間にはかなりのかい離がある。当時の「華僑」の大半は貧困層であり、やむを得ず故郷を捨てて海外へ流れ出て行った民だが、現在の移民層は富と共に海外へ流れている。

国内の事情に明るい富裕層の人々が情勢の悪化を敏感に察知し、船が沈まない前に、或いは沈もうとしている船から一斉に脱出しようとしている様に見受けられるが、これは穿った推測だろうか。

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