一隅を照らす灯り

生活

 本年を振り返って、わが国の地域医療の実態や行政には、幾度と無く憤懣やるせない思いをした。現在も医師不足は、行政の無作為が大きいと思う。かといって、行政が制度の舵を大きくとり直しても、一朝一夕に問題が解決することなく、むなしく費える時間がなんとも恨めしい。医学部の定員増では不十分

である。命の問題には具体的で適切な対策が必要不可欠である。

5年前の旭川医大の医師派遣制度には驚いた。若い医師の研修の場は、札幌に集中しがち。そこで、研修終了後の道内勤務を条件に医師に、月額20万円の「研修資金」を支給することになったのだが、原資の1億円は、札幌のパチンコ店などを経営する太陽グループが拠出。これにより、08年と09年に各20名づつ研修医に支給を開始し、09年度には一部の医師を地方に派遣。

医大の地域医療への責任を果たすためにパチンコ店がサポートするというのは、意外な取り合わせのようだが、コラボレーションの可能性に期待できる。

 

また同じく5年前の9月18日付毎日新聞に掲載された女医さんの生き様に感銘を受けた。当時91歳の玉盛やす子さん、現役の医師でだった。新宿区左門町の診療所で週5日の勤務を続けていた。その入り口には、「支払いにお困りの方は免除」という張り出しがしてあったという。内科、小児科、皮膚科、リハビリテーション科を一人で受け持ったという。生活保護を受ける方や路上生活者らに手を差し伸べ、「困っている人は、どんどん来てくれていのよ」と今後も受け入れるつもりと当時のインタビュー。これは、財団法人国民保健会(付属四谷診療所)の守るべき趣旨だという。「張り出し」は、正確には次のように書かれていたという。

「医療費の支払いにお困りの方は事情によって減額・免除いたしますからご遠慮なくお申し出てください」一日に、ほぼ25人の診療を行い、昨年、実際に減額・免除された方は10人だったという。人数の多い少ないではない。

本当にお困りの方は、どんなにか心強く思うことだろうか。まさに混迷する社会の一隅を照らす灯りのようで、なんとも暖かく心強い思いになる。ただし、厳密には医療費の支払い云々のくだりには法律的には問題があるらしい。

以前、ボランテイア活動で、最貧国の子供たちの無償診療所づくりに取り組んだことがある。支払いを心配するあまり、診せるのが遅くなり、本来、救える命が亡くなってしまうことが多く、心から憂い活動した。元気な子供たちには、初等教育支援を行った。健康で、自立心が宿り、教育によって潜在能力を開発できた子供たちは、やがて自らの力で国を興し、誇りと晴れがましさを手にしてくれることだろう。私たちの善意は、たとい小さくとも一隅を照らす灯りのようでありたいものである。

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