箱根駅伝 ~ 愚直に務める日々の努力

生活



毎年、正月になると箱根駅伝の放送に釘付けになってしまう。どうしても、母校の襷を繋いで走る後輩達に感情移入してしまうのだ。小職の母校は、過去連覇を果たしたこともあるので、よく強豪校といういい方をされる。が、その実、長く低迷していた時期があり、関係者がなかなか報われることのなかった年月を優勝の時には偲んだ。現在の母校の監督は、大学の同期にあたるので親近感をもっているが、親しく話をさせてもらった元監督に過去の優勝祝勝会の時、かねての指導の話を伺い、感じ入ったことがある。自分なりに人生や経営に置き換えたりしてみても示唆に富む話と思うことがあるので紹介したい。

 

大学駅伝には、出雲駅伝、全日本駅伝(熱田神宮~伊勢神宮)、箱根駅伝と三大駅伝があるが、注目度と伝統という点で箱根駅伝がシーズンのクライマックスに違いない。だから監督は、コンデイションのピークを1月2日、3日に

もってこれるように努力する。

箱根駅伝が終われば、1月4日から新たなシーズンが始まることになる。

先輩にあたる元監督にうかがったのは、まず、シーズンは、1月4日から12月31日まで掛けて準備すると考えているということ。仕上げが箱根駅伝という事なので、その間は一喜一憂しないように士気を保っていると聞いた。気になったのは、その後の話である。大学の強豪校といういい方をされているので、自薦他薦を問わず優秀な選手が入学を希望してくるが、高校時代の成績よりも日頃の練習や行動をみて入学を勧めるようにしているという。

理由は、大学駅伝のピークの時は、風邪が流行る時期であり、最新の注意を払っても防ぎきれるものではない。どんなに優秀な学生がいても、努力を重ねていても風邪や体調不良に克てるものではない。そこで、監督やコーチ自ら、日頃の健康管理を実践し、見える形で啓蒙に務める。良い例が、うがいや手洗いの励行である。うがいは、外出後や食事前に念入りに行う。手洗いは、外科手術の医師のように肘から下を丁寧に洗い、爪の所はたわしで洗う徹底ぶりである。これは、風邪のシーズンに無縁の春秋や夏の暑い盛りも徹底して行う。

 

愚直な努力が続くのだが、油断して手を抜くと、あるいは馬鹿にしたような言動をする者が出たら、主力候補といえども、迷わずレギュラーから外すと元監督は言っていた。どんなに優秀な学生でも、愚直な努力が出来ない者は、最終的にひとに迷惑を掛けてしまうからだそうである。他方、潜在的な能力がさほどない選手であっても、愚直な努力は、思いのほか力を顕在化させてくれて眼を見張るほどの成績をもたらすことがあるという。監督の言葉を借りれば、人生も豊かなものにするためには、能力資質に頼るのではなくて、愚直に愚直に努力できる性格性質をつくりあげてゆくことだということである。

たかが駅伝である。襷をもって繋いで走るだけのことである。

 

だが、箱根駅伝は、10人の選手が平均20キロ以上の距離を走らねばならない。10人が、体調不良や突発的なトラブルに巻き込まれずに襷を繋ぐことは実に厳しい競技である。いや、むしろ前出の監督の言葉に習えば、大学の競技関係者全員で一年間を繋いで走る事業である。一年間の事業であるならば、計画も目標も明確にして共有せねばなるまい。一年間の事業であるならば、やはり、たった一日だけ、あるいは一週間、一月間程度は頑張れるけれどという程度の仲間に襷は託せまい。

 

箱根駅伝といいつつ。実は、巷間にある事業の本質や構成要素、人材の選出まで思慮深い示唆をしてくれているように感じられてならない。やはり、見る者に懸命走る姿を自らの日々、困難と闘うを姿にダブらせてしまうことだろう。このたびの駅伝も、事故なく愚直な努力をした選手らが無事に完走してくれるようにとただただ願うばかりである。

 

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