名古屋のS商事N社長のこと。

生活

 景気に左右されるモーターレースだが、人気は根強い。フランスで行われる最高峰の耐久レース「ルマン」。モーターレースを見るたびにN社長のことを

思い出す。N社長と親しくなったのは、中国視察のアテンドを依頼されて、現地案内することが契機となった。天安門事件がきっかけで、世界中の外国人が、中国から一斉に本国に人と資本を引き上げたとき、私の知人は、あろうことか「今、進出したら目立つし、投資が再開したときには新時代のパイオニアになれる。」との思いで進出した。図らずも、私も氏のお手伝いをすることで、天安門事件以後の市場開放経済や各種手続き、行政法、税法に詳しい専門家ということになってしまい、中国政府公認の投資諮詢(コンサルタント)師資格を授

権利された。

N社長は、中国に進出した場合、日本式ガソリンスタンドや車回りの各種サービスは受け入れられるか?という「見極め」がしたかったのだった。「問題」は、サービスは受け入れられ必要とされるだろうが、サービスを行う側の「教育」だった。この時代、外資系の高級デパートでさえ、不愉快な接客などざらで、つり銭を投げてよこされることもざらだった。N社長は、中国での社員「教育」訓練を心配していなかった。彼には、教育に対する「哲学」と「確信」があったのだ。

名古屋の本社にN社長を尋ねて行ったことがあった。

本社に併設のガソリンスタンドや車検場の前を通ると「金髪」や「剃りこみ」を入れた「元気」のいいお兄ちゃん連中から丁寧な挨拶をしてもらった。恰幅よく、礼儀正しいN社長のイメージからして、この社員達の姿格好は、意外に思えた。聞けばN社長は、養護施設から、毎年毎年預かり、社会的な訓練を通して人材養成を行っているとのこと。見学をした夜、社の盆休み前の慰労会に誘われた。「金髪」や「剃りこみ」のお兄ちゃんがなれないネクタイを絞めていて、ビールを盛んに勧めに来る。決して、勧め上手でもないが、気持ちの良い接客である。「感じの良い子たちですね。」というと目を細めてN社長が口を開いた。「Tさん、こいつ等みんな、ち●ち●に毛が生えたぐらいの子なんです。」「私ね。気づいてくれるまで辛抱強く待つのが教育だとおもっているんです。」「最初ね。こういう場に連れてきても、真黄色の髪の毛なんかにしてるんだけど、2年くらい経つと黒い髪にしたりするんです。」「3年くらいしたらネクタイもするようになるし、背広だって着たりするようになる。」「良く気づいたなあ、お前って。言ってやると胸をはったりするんです。」「そんな時、こいつ等の親父になれるんです。」

その翌年、N社長は仲間とルマン24時間耐久レースに参加。カンパ集めも手伝った。ティ-ムT は、あと一周のところまでトップで走ったきた。早朝、友人知人を叩き起こして声援した。が、あろうことかゴールが見える直前、エンジントラブルでリタイア。逞しい赤ら顔に笑みを浮かべ「また、挑戦しま~す。!」と愛すべき親爺。枯れても、人生まだまだ余熱ありというのが嬉しい。

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